妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

166.

「いいねえ、、」とガルダは、独り言なのか、その男に言っているのかどちらともつかない声量で言う。 油断もなく、しかし戦意も見せず、、かと言って「何か」あれば迅速に対応する姿勢が感じ取れる。むしろその気配を恐らくわざと伝えて来る。 相手方は十人…

165.最終章

荒れ果てている。この街が大都市の中心だったのは「昔」のこと。 栄華を誇った退廃の塊のような、そんな巨大なビルばかりだったが、今はある意味で美しい「墓標」だ。 かつては、夜でも光り輝いていたありふれた景色も、今のこの世界にあって眺めると、まる…

164.蝙蝠

もうおわかりですよね。 私の南斗蝙翔拳の師の愛娘、私が心奪われ強く惹かれた女性(ヒト)。そしてその女性が認めた弱くも清らかな魂を持った男との間に授かった命。 名をリマといいます。 それが、ですね、、、、はぁ、嫌になりますよ、幾度リマには災厄が…

163.蝙蝠

胸元に布でくるまった小さい命を預かり、私はヘンショウキ様からいただいた黒い翼で野を、山を、突き進みました。 南斗様同様、シュメにも生きて出ることは許されない、赦されないという厳しい掟があります。 破ってはならないからこその掟。それとも破るた…

162.蝙蝠

話を長くしても仕方ありません。ここからは飛ばして行きますよ? ヘンショウキ様は見事に仇討ちを遂げ、ことが明るみに出たことで、ホタル様の愛したかの方のご家族にも、当然知られることとなりました。 かの方の御一族は「事務方」でしたが、先程申し上げ…

161.蝙蝠

話が長い、、そう思われる前に、いや、もう遅いですかね。急ぎます。こうやって話す機会って、近頃めっきり減ってしまったものでしてね。 誰かに色々と話したいという衝動がときどき、、、あ!、すみません、こいうところですね。 その下衆はですね、、実名…

160.蝙蝠

ホタル様の愛した方、、、はですね、私と違ういわゆる「事務系」の方でした。 ヘンショウキ様は「現場」の方でしたが、南斗様が直接に現場を手掛けることは極めて稀でして、己が流派を高め究めるのが実際のお勤めでした。 現場をこなすのは大概私たちのよう…

レイ.40

暗い森を彷徨っているような感覚、、、俺は気絶していたと自覚した。全意識を集中し、その靄のかかった森から脱出を試みた。 俺は両目をカッと見開くと、辺りの気配を察しながら、同時に自分の肉体の状態を確かめる。不動のままに。 人の気配はあるが、特に…

159.蝙蝠

私、、、というものはですね、同じ女の方と寝たことがないんです。何もこれはシュメの中では私だけ、というような、特別な話ではありません。 実行役、それも腕利きなほどに同じような境遇だったりします。特定の女に執着するようだと、腕が鈍りますからね。…

158.蝙蝠

シン様 あまりに唐突なる別れをお許し下さい。しかし生憎、ときに別れとは突然に来るものであることをよくご存知でしょう。 それを思えば私たちの別れは大の字が2、3個付くくらいの成功ですよ。 まぁ、突然なのは確かにアレなんですが、その時は近いとわかっ…

157.蝙蝠

「蝙蝠」 シンは立ち上がりながら言った。 幾多もの死闘に酷使して来た躰だが、幸いにして痛む箇所はない。ケンシロウとの戦いを前にしての無駄な不安要素はないということだ。 「はい?」と蝙蝠のマイペースは変わらない。 そんな手練れの元シュメに神妙な…

156.

後始末は終わり、それからさらに数ヶ月が経過していた。 瞑想の中、シンはあの時を想起した。 山々の幾箇所から煙が上がっている。火は善悪なしに全てを焼き尽くし浄化する。 南斗宗家の凄惨極まる所業を浄化するのは、まさに火のみであろう。しかし、「浄火…

155.

「フッフフ、フフフ」 シュラインは細い石造の道を走っている。一人走っている。 ガルダの爪による傷と氣炎で焼かれたダメージは軽くないが、並の人間以上には走れていた。 走りながらシュラインは笑っている。 途中すれ違う者は誰もいない。既にこの聚聖殿…

レイ.39

「レイさん」 ケンシロウ救出に出る前、そう声をかけて来たのはシュウの息子、シバだった。 「どうした?シバ」 「余計なお世話かも知れませんが、、」 とシバは砂色のバックパックを持って来た。大分膨らんでいる。 「これは?」 「これは、、こんな時もあ…

154.

自身も歴戦の雄であるモウコは読む。 合掌拳によるガルダの押す力を横に逸らせば、ガルダは一瞬バランスを崩す。シュラインはそれを見逃すほど鈍くも、甘くもない。 なのに、シュラインは動かない。いや、動けない。 それほどまでにガルダが見せる気迫はシュ…

153.

「どうだ?若造? イったか?」 「ぐ、、くう、、、」 苦悶に歪むガルダを見ながら「もう少しか」と、シュラインは静かに笑う。 「既に麻痺して動けないだろうが、秘孔の術の効果が完全に回るまで、あと少しある。その時が来たら叫べ。脳天に突き上げるよう…

レイ.38

世界は確かにひっくり返った。 あの以前の生活には、もう二度とは、、、かどうかはわからないが、俺が生きている間に人類があの繁栄を取り戻すことは、絶対にない。 「絶対」と物事を言い切ることは難しいが、この場合に関して言えば絶対に、と言えるだろう…

152.ヤサカといえば八坂 八坂といえば神社 神社はシュライン

「、、、やはり、あの男の方が上か」 モウコは呟いた。 無数なるガルダの炎の拳も、シュラインにはほぼ完全に見切られていた。ガルダ渾身の奥義も、シュラインに軽い切り傷と火傷を与えた程度で終わった。 いかにガルダが拳を速く繰り出し、その数を水増しし…

151.

白の街の中央広場。 高い天井から照らされる光が、街の中を昼間のように明るく照らしている。決して大袈裟ではなく、昼間の様に明るかった。 違うのは人工の光が故か、自然の温かみがないことだった。冷たい光だった。 「戦場の拳ねぇ」 警戒は互いに最大限…

150.

「こうなってしまうと、あの南斗宗家宗主というのも、、、」 蝙蝠は綺麗に真っ二つに裂かれたバルバの亡骸を、汚物を見る目で一瞥した。 人の死骸も汚物といえば汚物ではあるが、蝙蝠の視線にはバルバに対する私怨と侮蔑の色が濃く映っている。 「助かった」…

レイ.37

ラオウとの睨み合いで、サウザーにこちらを気にする余裕がない、それを見計らい、俺はケンシロウを背負って走った。 目指すはこの街の外、という曖昧な目的地点。 もちろん、街からの脱出が成功しても、それならそれで追手は来るだろうが、先ずは脱出だった…

レイ.36

バックパックを胸の前に掛け、そして瀕死のケンシロウを背負った。いかに南斗水鳥拳伝承者でも、大の男をおぶってまで、自由に動くことは難しい。もちろん、この状態でも常人よりは遥かに超人的に動くことは、可能だ。しかしだ、そう、しかしなのだ。外の騒…

レイ.35

俺の背後に、追って来るサウザーの気配はない。この先が行き止まりなら多少は面倒なことになるが、壁を斬って逃げ道を作ることは、俺、つまり南斗水鳥拳にとっては、それほど困難なことではない。それよりも、サウザーが南斗聖拳最強と謳われる男とはいえ、…

149.

シンは苦しみの最中に笑っていた。苦痛に顔を歪め、呻き声を発しながらも、それと同時に口角が上がるのを抑えられない。 バルバの暗黒の呪気は南斗の裂気を靄のように溶かし、そして蒸散させる。その作用は体内にまでは及ばないものの、宙に浮かされた状態で…

レイ.34

「フフ、レイ、お前は何をしている?」 サウザー、、、、 「決まっていよう! ケンシロウを助ける!」久しぶりの再会はさておき、勝ち目の少ない相手に激昂して見せる俺は、まるでキャンキャン吠える仔犬に思えた。 「そんなことはわかっている。お前は、「…

148.

時は少し戻る 、、、バシュッ赤い飛沫が舞った。 幾度か拳の応酬を経て、遂に二人が互いの間合いを掴み始めた。 シュラインの右肩が浅く斬られている。その一方でガルダの右肩にもシュラインによる指突の痛々しい跡が残る。血が舞うかわりに、ガルダの肩当て…

脱線

見て、まずあの大きな選手。チーム北斗の大黒柱、センターのラオウ。身長210cmで筋骨隆々。他を圧倒する無類のパワーでゴール下を支配する。器用ではないけどオフェンス、ディフェンスともにチームの要。言ってみれば古いタイプのセンターだけど、じゃあ誰が…

147.

「バルバ。俺を闇から救い出したのは、、、」「、、、」「南斗の先人たちだ」 その言葉はバルバを驚かせるものだった。思わず口を開いてしまうほどに。幻覚作用により見せられた南斗の先人たちによって、北斗神拳への怨念を増し重ねる狙いは失敗していただけ…

146.

シンは聚聖殿のほぼ中央に位置する、南斗を祀る古の祭壇の前にいた。闇の中、その燃え盛る炎の前で護摩を焚いているのは南斗宗家宗主バルバである。 その煙はもうもうと上がり、煌めく星の夜空へと吸い込まれて行く。シンは、北斗七星があるかも知れぬ天を見…

145.

一人のシュメが人質の救助が完了したことを告げた。 「うむ。だがまだだ。供物にされようとしている子供たちがいるかも知れん。慎重に進むぞ!」 モウコは自らも気を引き締めた。白の街から大きな門を抜ければ、さらに奥に続いた道があるが、、、狭い。この…