妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

レイ.39

「レイさん」

ケンシロウ救出に出る前、そう声をかけて来たのはシュウの息子、シバだった。

「どうした?シバ」

「余計なお世話かも知れませんが、、」

とシバは砂色のバックパックを持って来た。大分膨らんでいる。

「これは?」

「これは、、こんな時もあろうかと、密かに用意してたものです」

とシバは何故か恥ずかしそうに顔を背けた。

受け取ったバックパックの中身を、俺は確かめた。

「! シバ、これは、、、」

「レイさんが行くとなったので、これを託します。必要ないかも知れませんが、念のためです」

「シバ、お前こんなものを、、、」

澄み切っていると言ってもいい笑顔のシバと、バックパックいっぱいに詰められたブツは、まるで真反対の存在のようで、俺は戸惑った。

「これは、先生の力添えなく、私だけで作ってみました。まとめて爆発させたらそれなりにはなると思いますけど、、使ってみないと、、、」

私、、か。レジスタンスと言えば聞こえはいいが言い方一つ、ゲリラと言ってしまえばそれまでだ、俺たちは。

南斗聖拳だって決して華々しい組織ではないが、それでもあの界隈でなら、黒く艶やかな花弁いっぱいの、匂い立つような大輪の花だった。

その最高峰に立つ男、仁星、南斗の重鎮にして良心、白鷺拳のシュウ。それを父に持つということは、このシバにも重圧ではないだろうか?

そんなシバがこんなものを作るということ、、、「爆発」はこのシバの鬱憤というか、、何かを象徴しているのではないか?

そんなことを、俺は考えた。

「フッ、わかった。だがこれを使わずに越したことはない。安心してくれ。これよりも、俺はコレでケンシロウを救い出して見せる」

と、俺は右手の甲をシバの輝くような瞳に向けた。

決してボンボンなんかじゃない。シュウの息子だからって優遇されて来たかどうか、、、

敵をあのサウザー、聖帝勢力とするこのレジスタンス。甘くないのは想像に難くない。なのに、その辛さをまるで顔に出さない。

そんなお前の強さが、俺には染みる。こんな時代を終わらせるのは、シバ、お前のような目をした、俺よりも若い世代なのかも知れない。

そうであってほしいという、俺の願いなのかも知れない。


お前の光は消せないよ。


だから、お前にこんな真似はさせたくない。俺か? フッ 俺は、、もうこの程度で汚れるような余分な空きはない。任せろ。



「ユダ!」

背後から目で突き刺して来るユダに、声と視線で覚悟を示した。

まだ奴との距離はあるが、奴が本気になれば、この距離も錯覚だったのかと思えるほど近いものになる。

だが奴なら、、俺の視線の中に、一物あるを悟るだろう。

、、、やはり。

ユダは怪訝な表情を刹那浮かべた。だから奴は飛び込んで来ない。間合いを詰めて、しかし詰め過ぎずの裂波で来ない。

「貴様ら追え! 捕らえよ!」

騒がしい今宵にもよく通るユダの声。自ら来ず、兵を動かしての様子見だろう。

いいのか?それで。

いかに俺がケンシロウを背負っていようと、いかに太腿に一本突き刺さった後でも、飛び道具を持たない兵卒に、俺が遅れを取ると?


ダガール! ギタイ! ゴウライ!」

「!」

それを聞き、俺は戦慄した。
ユダの右手と言えばダガール、なのだが、そいつ含めたユダのお気に入りで妖星麾下の「三爪」と称される拳士がいた。

それぞれが南斗中堅程度の流派の使い手だが、それがここに集ってやがる!

三人! 三人か、、、いやそれより何よりこちらの状況! 太腿の負傷が急に枷になった。

そして背負うは乱世の希望、、、

やり合ったら勝ち目は薄い。そんな状況だ。


「シバ!」

とだけ、何故か俺は叫び、胸の前に掛けてあったバックの導火線を摘んだ。バラにしても使えるし、一気にバン!とも使えるよう導火線が組んであった。

指先に氣を集中し熱に転換する。さほど得意でもないが、ライター程度の火なら容易だ。

チリチリチリッと小さい火が、俺の思っていたよりも速く線を焦がし落として行く。

少し慌てた俺は急いでショルダーストラップを切り裂き、そして振りかぶった、奴らにむけて!

ユダ!お前ならこれを投げても爆発前に回避するだろう? 三爪はどうだ? 一人くらいは逃げるか?確実なのはこれで兵たちはお陀仏ってことだ。

「そら!」

幾分かハイになっていた。それでも十分にこちらが安全圏となるよう遠くへ投げた。

爆発というものの力は侮れない、決して。

そのくらい知ってるつもりだ。爆発物を所持した敵との戦闘も想定されていたのだ。旧世界では。


そして、、

光ったのが見えた。


シバ、、、お前、天才だよ。いや、天才すぎる!

その爆発は、かなり大きく膨らませた俺の想像を絶するほどで、、、

 

世界は、、

核の炎に包まれた、、、、


そんな勢いだった。