妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

2022-01-01から1年間の記事一覧

177.

その日、師父は慌しかった。北斗神拳伝承者リュウケンを招いていたからだった。 リュウケンに対しては、技においても人格においても、ほとんど敬うほどの思いを、師父は抱いていた。 いわゆる親北斗派であって、その中でも最も先端にいるような男である。 本…

176.

ケンシロウがスゥッと近付いていた! 「なに!!」 いつ!? シンの心の隙間に撃ち出す横蹴りの連打! 「あたたあ!」 ガードを固めて蹴りを受ける! 流せない間合いで蹴り込まれた力がシンの腕を一瞬の痺れを与えた。 言うまでもなく、その蹴りの威力は筋力…

175.

ケンシロウは動かない。待ちに徹しているというわけではなかった。 互いに待ちに入れば、先に動くのはシン。そうに決まっていた。 ケンシロウは北斗神拳真の伝承者らしく、偏りのない真円なる拳であるのに対して、シンは攻に寄っている。 少なくとも現在のシ…

174.

互いがそれぞれの天帰掌を解除する。 シンは突き主体のため、指を伸ばし、右前半身の構えで、右手の指の高さは目線やや下。左手はそれよりまた低く防御と迎撃を兼ねる。 ケンシロウは左前半身の構えで、シンとは左右逆である。しかし、拳は握っており、前に…

レイ.41

「全く!」 ぼやかずにはいられない。 「どうして!全く!」 繰り返し、俺はぼやいた。 バイクでレジスタンスの隠れ処を飛び出して30分も経たないというのに、、、、 アクセルを握り込む手に変わりはないはずだった。なのに、ツーストの軽いエンジン音リズム…

173.

黙って向かい合う、二人の至高なる拳士。北斗神拳伝承者と南斗聖拳伝承者。 ケンシロウは重い沈黙を守ったままだ。暗殺拳同士の対決とは言え、拳法家の戦いだ。始まりの合図なくしては始まらない。 合図と言っても、二人同時の合意の瞬間があればいい。その…

172.

以前会った時は、いや、それ自体さほど過去の話ではない。にも関わらず、受ける印象がまた異なっている。 鋼鉄のような男、、、それがシンが観るケンシロウへの印象だった。この短期間で何かが変わったのか、、、? 違う そうではなく、実態の不明さこそが現…

171.

「はぁ、はぁ、はぁ」 荒い息遣いは自分のものだった。負傷も疲労も、間違いなく極限だ。 しかし、この息遣いはその極限にぶち込まれた状態によるものだけでなく、、、、目を疑う光景を前にしている自分を落ち着かせるための呼吸、その意味合いもある。 あの…

170.

「は!?」 シンは壁に寄りかかったままだった。俺は今、、何を見たのか? それにしても、とギルはシンを、というよりも得体の知れない目の前の男を刮目したままに思考の渦に呑まれている。 数秒して、その渦を逃げ出して着いた先の理解、、、これが真の暗殺…

169.

シンとガルゴとの一戦を前に、中央帝都の上空は、、「天が割れていた」。それほどの対決がそこにあった。 かのガルゴが言うには、天が割れているのは二つの天帝がそれぞれについているから、らしい。 そんな天帝の権威を互いに背負うような大一番の陰で、誰…

168.

「この辺にいると聞いていたが、、、」 などと男は声には出さず、廃墟と化した街を油断ない目で一人歩き回っている。 曇天だが真っ昼間、男は全身黒づくめで防水加工を施した、やはり真っ黒の傘を被っている。 ここまで黒一色に統一しているのは、あの蝙蝠く…

167.

「どこの誰から聞いた話よ?」 泰山王にさえ敬意を抱かないガルダの態度に怒りを覚えたか、筋肉達磨の髪の毛のない頭が紅くなる。 「(ん? 小芝居ではない?)」と、侮る気はないが、短気な男を見てガルダはニヤけた顔を作る。 敵対しても仕方ないどころか…

166.

「いいねえ、、」とガルダは、独り言なのか、その男に言っているのかどちらともつかない声量で言う。 油断もなく、しかし戦意も見せず、、かと言って「何か」あれば迅速に対応する姿勢が感じ取れる。むしろその気配を恐らくわざと伝えて来る。 相手方は十人…

165.最終章

荒れ果てている。この街が大都市の中心だったのは「昔」のこと。 栄華を誇った退廃の塊のような、そんな巨大なビルばかりだったが、今はある意味で美しい「墓標」だ。 かつては、夜でも光り輝いていたありふれた景色も、今のこの世界にあって眺めると、まる…

164.蝙蝠

もうおわかりですよね。 私の南斗蝙翔拳の師の愛娘、私が心奪われ強く惹かれた女性(ヒト)。そしてその女性が認めた弱くも清らかな魂を持った男との間に授かった命。 名をリマといいます。 それが、ですね、、、、はぁ、嫌になりますよ、幾度リマには災厄が…

163.蝙蝠

胸元に布でくるまった小さい命を預かり、私はヘンショウキ様からいただいた黒い翼で野を、山を、突き進みました。 南斗様同様、シュメにも生きて出ることは許されない、赦されないという厳しい掟があります。 破ってはならないからこその掟。それとも破るた…

162.蝙蝠

話を長くしても仕方ありません。ここからは飛ばして行きますよ? ヘンショウキ様は見事に仇討ちを遂げ、ことが明るみに出たことで、ホタル様の愛したかの方のご家族にも、当然知られることとなりました。 かの方の御一族は「事務方」でしたが、先程申し上げ…

161.蝙蝠

話が長い、、そう思われる前に、いや、もう遅いですかね。急ぎます。こうやって話す機会って、近頃めっきり減ってしまったものでしてね。 誰かに色々と話したいという衝動がときどき、、、あ!、すみません、こいうところですね。 その下衆はですね、、実名…

160.蝙蝠

ホタル様の愛した方、、、はですね、私と違ういわゆる「事務系」の方でした。 ヘンショウキ様は「現場」の方でしたが、南斗様が直接に現場を手掛けることは極めて稀でして、己が流派を高め究めるのが実際のお勤めでした。 現場をこなすのは大概私たちのよう…

レイ.40

暗い森を彷徨っているような感覚、、、俺は気絶していたと自覚した。全意識を集中し、その靄のかかった森から脱出を試みた。 俺は両目をカッと見開くと、辺りの気配を察しながら、同時に自分の肉体の状態を確かめる。不動のままに。 人の気配はあるが、特に…

159.蝙蝠

私、、、というものはですね、同じ女の方と寝たことがないんです。何もこれはシュメの中では私だけ、というような、特別な話ではありません。 実行役、それも腕利きなほどに同じような境遇だったりします。特定の女に執着するようだと、腕が鈍りますからね。…

158.蝙蝠

シン様 あまりに唐突なる別れをお許し下さい。しかし生憎、ときに別れとは突然に来るものであることをよくご存知でしょう。 それを思えば私たちの別れは大の字が2、3個付くくらいの成功ですよ。 まぁ、突然なのは確かにアレなんですが、その時は近いとわかっ…

157.蝙蝠

「蝙蝠」 シンは立ち上がりながら言った。 幾多もの死闘に酷使して来た躰だが、幸いにして痛む箇所はない。ケンシロウとの戦いを前にしての無駄な不安要素はないということだ。 「はい?」と蝙蝠のマイペースは変わらない。 そんな手練れの元シュメに神妙な…