もうおわかりですよね。
私の南斗蝙翔拳の師の愛娘、私が心奪われ強く惹かれた女性(ヒト)。そしてその女性が認めた弱くも清らかな魂を持った男との間に授かった命。
名をリマといいます。
それが、ですね、、、、はぁ、嫌になりますよ、幾度リマには災厄が降り掛かるのか。いや、きっと皆そうなのでしょうけど。
生き残るからこそ、災難に遭い続ける。それもこの世界、、なのかも知れません。
シン様によって、、、蘇った南斗聖拳によって一度は救われたリマと村の生存者たちは、しばらくの平穏の後、突如急襲されました。
しかし、命奪われることなく、リマたちは連れて行かれ、人質の名の下に安寧な生活を与えられました。
南斗宗家、白の街、その先の話はご理解いただけますね。
シン様、、、私はね? 本当に南斗様の、特に貴方様の大ファンです。きっと一番のファンです。ファンクラブがあったら会員番号1番ですよ。
ですから私は、、闘神のようなケンシロウ様と戦うという強い決意ある貴方を、止めることはありません。できません。
強いですよ? シン様の南斗聖拳もお見事ですが、北斗神拳と、そしてあの方個人の強さ、あらゆる意味での強さ。
はっきり申し上げて、シン様よりも上でしょう。はい、シン様ご自身が認めているようにね。
なのでです。勝てとは言いません。ただ、生き残って下さい。
シン様の第一章キング編これに続く第二章。
これも良かった。第一章のみならず、この物語に参加させていただいた。じゅううう分です。
その第二章ラストを飾るのは、いよいよのケンシロウ様との対決!、、、生き残って下さい。
そして、もう立ち見席でさえ観劇致しませんが、私は第三章も期待してるんです。
ただ、その時は、、、ヘンショウキ様やホタル様の話を思い出していただきたい。あの方たちに起きた悲劇をね。
その悲劇から、あなたが「演出」を手掛けた第一章での、もっと大きな悲劇を振り返っていただきたい。
私が今でもかの下衆を恨むように、シン様のもう一つのお顔「キング」が起こした悲劇も、、、その、、、あれはないだろ?って思ってるんです。
生きて下さい。その業を背負って下さい。私も人様を言えた義理じゃないんですが、ね。生きて、ずっと生きて、そして苦しんで下さい。
さて、、、、
救い出したリマですが、今度は私が直接お守りします。そして今リマの隣には同じく若い旦那様とその小さい男の子がいましてね。
ヘンショウキ様から預かっている大きな「荷物」も、いずれこの子に「お返し」しなくてはなりません。
そして、、、そしてもうひと方、、、
口も利けず、心を病んだ女の方がいましてね。健康も害していますし、車椅子に乗るのもやっとの状態なのですよ。
車椅子?とお思いですか? こんな時代に車椅子に乗るような人間が生きて行けるのか?と。
ですが守り抜きます。最後までお世話して、その心が戻らないにせよ、私はあの方に生涯を捧げます。
あの方のお命尽きるまで側にいて、口元が微かにでも緩むかも知れないその奇跡を信じて、ね。
見返りなんか要らない求めない。あの方の隣で、、あの方の心が死んでいても、綺麗な山々を見て、清流のせせらぎを聴き、
随分と乱れておかしくはなりましたが、繰り返す四季の香を共に感じたい。暑さも寒さも共有したい。
もちろん、彼女たちの命の日々を私は全て見届けます。まだまだ私は長生きしなければならないんです。リマよりもね。
それからはぁ、、ですね。シン様のお墓を守りましょう。はい。
私はシン様よりも、少しだけ、、ハハハハ、、少しとして下さい、、、長く生きてますが、もっと長く生きてシン様のお墓をお守りしますよ。
その時のそのお墓、真新しいものであってほしいものです。ケンシロウ様との直後に造られた、なんてやめて下さいよ?
さて、、、はい、そろそろ、、、頃合いですね。シン様、左様なら私ももうおさらば致します。
生き残って下さい。勝たなくていい。生き残るんです。生き残って第三章を「執筆」なさって下さい。
いずれ時が経ち、その物語を「読む」ことを、私はこれ一つの楽しみとして胸に抱き、愛する方々を静かに見守る心算でございます。
と、長くなりましたが、、全てこれは私の一人語り。シン様のお耳に届くことはない。いきなり去ってしまう私を怪訝にお思いでしょう。
ですが、シン様ならある程度は察して下さると、勝手ながら思っています。
いいんです、これで。人ではない私でさえ、シン様との別れは、そう、今生の別を前にしては変な何かが込み上げそうです。
しかしそんな姿を晒すのは、それは私の言う忍ではない。
南斗聖拳の伝説が語られるとき、そこに蝙蝠の名が出ることになるですって? やめて下さいね?本当に。
忍が痕跡を残さないのは、関わった人々の記憶の中も同様なんですよ。
蝙蝠という男、、、そんなのは始めからいなかった。
南斗聖拳シン様という希代の拳士が再起するときに、きっかけとして自分で生み出した幻。それでどうでしょう?
はい、それがいい。
はい、、、
それでいい。