妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

レイ.41

「全く!」

ぼやかずにはいられない。

「どうして!全く!」

繰り返し、俺はぼやいた。

バイクでレジスタンスの隠れ処を飛び出して30分も経たないというのに、、、、

 


アクセルを握り込む手に変わりはないはずだった。なのに、ツーストの軽いエンジン音リズムに、狂いが生じていた。

「おい、、嘘だろ」

バズズ、、バズズン、、バリバリバリバリ、、、バズズ、、、、プスン、、、、、

「え?」

こんな時に止まるかよ。セルモーターははじめから壊れている。キックペダルを出して、勢いよく幾度か蹴り下ろす。

バルルン!「お?」行けるか?という願いは一瞬で現実を直視させる結果に化ける。

「なんでこんな時にだよ!シュウも、ケンシロウも、先に行ってるってのに!」

ダメージを負い寝ていたからって、ケンシロウ先行くな! シュウあんたもだ!

ケンシロウは恐らく生来の我道行男だ。シュウにも何か俺を置いてでも急いで出なくてならない理由があったはずだ。

わかっている。わかっているさ。だが、俺のイラつきは悪態となって外に吐き出され続ける。

繰り返しキックペダルを蹴った、祈るように。時にはわざと数秒置いて深呼吸してから改めて蹴り込んだ。

「クソッ」

遂に俺は少しだけ氣を載せてキックペダルに思いの丈をぶつけた。人間を超える速さの蹴りならどうだ?と。

「うら!」

カキッ、、、、

「あ、、、」

どんな日だ!!

気付けばケンシロウ救出時に矢を受けた右太腿から血が滲んでいる。あまりのイライラで、痛みにも鈍感だったようだ。

 


選択肢1

力を解放して一旦戻り、別のバイクに乗り換える。トータルで考えればこの方が早い到着になるかも知れない。

しかし、俺は嫌な予感に取り憑かれた。また別のバイクもダメになるかも?或いはもう質の良いバイクが残っていないかも?

 


選択肢2

このまま力を解放して走って向かう。怪我はあるが、戦闘時の速さを求められているわけではない。

体力の消耗は残るがサウザーとやり合うわけではない。そうはならないと、思いたい。

 


2しかなかった。何より、一旦戻るという行為があまりにもどかしく、精神を正常に保てない気がした。

それにここからは進むごとに聖帝勢力の中心地となる。建設工場も多々見受けられていたし、「足」となるものの調達は期待ができる。

 


俺は南斗聖拳調気法にて走り出した。脚の出血は完全に止まっている。背負う荷物も「天才」が準備してくれた最高級品の詰め合わせだけだ。

動けないケンシロウを背負うことと比べたら極楽でお気楽だ。いや、事態は極楽でもお気楽でもないが。

スタタッタッタッタ、、ブワッ、、、タン、タタタタッタッタ、、、、

シュウ、、、ヤバい。あのヴィジョンがいよいよ過去一に強く明確なものになっている。

「シュウ!!」

そして、、あの馬鹿野郎!馬鹿野郎が!あの、、、あの、、、

「あのケンシロウってのはよ!!!」

「なんだ?」

え?あれ?いる。ズザザザ〜、、、

結構夢中で走っていたせいか、ただの徒歩だったケンシロウに追い付いた。いや、何という僥倖。

「どうしたレイ。何を急いでいる」

「いや急げよ!」

俺はケンシロウを指差した。イラつきは良くない。俺は自分が誰だかわからなくなっていた。

「レイ、どうした?」

「いや、なんでも、ない、、です」

一人別次元でイライラしていた俺は、急に我に帰った反動で恥ずかしさが込み上げた。

だがケンシロウに追い付いた。いいじゃないか、とりあえずは。