妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

156.

後始末は終わり、それからさらに数ヶ月が経過していた。 瞑想の中、シンはあの時を想起した。 山々の幾箇所から煙が上がっている。火は善悪なしに全てを焼き尽くし浄化する。 南斗宗家の凄惨極まる所業を浄化するのは、まさに火のみであろう。しかし、「浄火…

155.

「フッフフ、フフフ」 シュラインは細い石造の道を走っている。一人走っている。 ガルダの爪による傷と氣炎で焼かれたダメージは軽くないが、並の人間以上には走れていた。 走りながらシュラインは笑っている。 途中すれ違う者は誰もいない。既にこの聚聖殿…

レイ.39

「レイさん」 ケンシロウ救出に出る前、そう声をかけて来たのはシュウの息子、シバだった。 「どうした?シバ」 「余計なお世話かも知れませんが、、」 とシバは砂色のバックパックを持って来た。大分膨らんでいる。 「これは?」 「これは、、こんな時もあ…

154.

自身も歴戦の雄であるモウコは読む。 合掌拳によるガルダの押す力を横に逸らせば、ガルダは一瞬バランスを崩す。シュラインはそれを見逃すほど鈍くも、甘くもない。 なのに、シュラインは動かない。いや、動けない。 それほどまでにガルダが見せる気迫はシュ…

153.

「どうだ?若造? イったか?」 「ぐ、、くう、、、」 苦悶に歪むガルダを見ながら「もう少しか」と、シュラインは静かに笑う。 「既に麻痺して動けないだろうが、秘孔の術の効果が完全に回るまで、あと少しある。その時が来たら叫べ。脳天に突き上げるよう…

レイ.38

世界は確かにひっくり返った。 あの以前の生活には、もう二度とは、、、かどうかはわからないが、俺が生きている間に人類があの繁栄を取り戻すことは、絶対にない。 「絶対」と物事を言い切ることは難しいが、この場合に関して言えば絶対に、と言えるだろう…

152.ヤサカといえば八坂 八坂といえば神社 神社はシュライン

「、、、やはり、あの男の方が上か」 モウコは呟いた。 無数なるガルダの炎の拳も、シュラインにはほぼ完全に見切られていた。ガルダ渾身の奥義も、シュラインに軽い切り傷と火傷を与えた程度で終わった。 いかにガルダが拳を速く繰り出し、その数を水増しし…

151.

白の街の中央広場。 高い天井から照らされる光が、街の中を昼間のように明るく照らしている。決して大袈裟ではなく、昼間の様に明るかった。 違うのは人工の光が故か、自然の温かみがないことだった。冷たい光だった。 「戦場の拳ねぇ」 警戒は互いに最大限…

150.

「こうなってしまうと、あの南斗宗家宗主というのも、、、」 蝙蝠は綺麗に真っ二つに裂かれたバルバの亡骸を、汚物を見る目で一瞥した。 人の死骸も汚物といえば汚物ではあるが、蝙蝠の視線にはバルバに対する私怨と侮蔑の色が濃く映っている。 「助かった」…

レイ.37

ラオウとの睨み合いで、サウザーにこちらを気にする余裕がない、それを見計らい、俺はケンシロウを背負って走った。 目指すはこの街の外、という曖昧な目的地点。 もちろん、街からの脱出が成功しても、それならそれで追手は来るだろうが、先ずは脱出だった…

レイ.36

バックパックを胸の前に掛け、そして瀕死のケンシロウを背負った。いかに南斗水鳥拳伝承者でも、大の男をおぶってまで、自由に動くことは難しい。もちろん、この状態でも常人よりは遥かに超人的に動くことは、可能だ。しかしだ、そう、しかしなのだ。外の騒…

レイ.35

俺の背後に、追って来るサウザーの気配はない。この先が行き止まりなら多少は面倒なことになるが、壁を斬って逃げ道を作ることは、俺、つまり南斗水鳥拳にとっては、それほど困難なことではない。それよりも、サウザーが南斗聖拳最強と謳われる男とはいえ、…

149.

シンは苦しみの最中に笑っていた。苦痛に顔を歪め、呻き声を発しながらも、それと同時に口角が上がるのを抑えられない。 バルバの暗黒の呪気は南斗の裂気を靄のように溶かし、そして蒸散させる。その作用は体内にまでは及ばないものの、宙に浮かされた状態で…

レイ.34

「フフ、レイ、お前は何をしている?」 サウザー、、、、 「決まっていよう! ケンシロウを助ける!」久しぶりの再会はさておき、勝ち目の少ない相手に激昂して見せる俺は、まるでキャンキャン吠える仔犬に思えた。 「そんなことはわかっている。お前は、「…

148.

時は少し戻る 、、、バシュッ赤い飛沫が舞った。 幾度か拳の応酬を経て、遂に二人が互いの間合いを掴み始めた。 シュラインの右肩が浅く斬られている。その一方でガルダの右肩にもシュラインによる指突の痛々しい跡が残る。血が舞うかわりに、ガルダの肩当て…

脱線

見て、まずあの大きな選手。チーム北斗の大黒柱、センターのラオウ。身長210cmで筋骨隆々。他を圧倒する無類のパワーでゴール下を支配する。器用ではないけどオフェンス、ディフェンスともにチームの要。言ってみれば古いタイプのセンターだけど、じゃあ誰が…

147.

「バルバ。俺を闇から救い出したのは、、、」「、、、」「南斗の先人たちだ」 その言葉はバルバを驚かせるものだった。思わず口を開いてしまうほどに。幻覚作用により見せられた南斗の先人たちによって、北斗神拳への怨念を増し重ねる狙いは失敗していただけ…

146.

シンは聚聖殿のほぼ中央に位置する、南斗を祀る古の祭壇の前にいた。闇の中、その燃え盛る炎の前で護摩を焚いているのは南斗宗家宗主バルバである。 その煙はもうもうと上がり、煌めく星の夜空へと吸い込まれて行く。シンは、北斗七星があるかも知れぬ天を見…

145.

一人のシュメが人質の救助が完了したことを告げた。 「うむ。だがまだだ。供物にされようとしている子供たちがいるかも知れん。慎重に進むぞ!」 モウコは自らも気を引き締めた。白の街から大きな門を抜ければ、さらに奥に続いた道があるが、、、狭い。この…

レイ.33

南斗聖拳の本質は暗殺拳。闇に紛れた時、その真価を発揮する。 松明の下にいる柄の悪いモヒ二人の背後を、俺は駆け抜ける。 「ん?」「どうした?」「いや、、風、だな」「ビル風が強いからな」 わざわざ見張りを死体にして騒ぎを起こすことはない。俺は誰に…

レイ.32

「すまん、、、、わたしがバカだった」 そう深く詫びたのはシュウだった。不幸中の幸いと言おうか、ケンシロウはサウザーに敗れたが、その命までは奪われていないという。どうやらあのピラミッドの地盤に据えるとか、要は人柱として犠牲に捧げる魂胆とのこと…

レイ.31

義の星、、、 俺の歩みが、まさしくその宿命の星に導かれているとは、、自分では言い難い。「義」とは生半可な覚悟で体現できるものではない。振り返ってみれば、「あちらの世界」での最後のユダ戦での俺は、「義」というものに近付いていたのかも、、知れな…

144.

「思い掛けないほど、上手く行きましたね。こんな時は逆に用心しないと」 南斗宗家聚聖殿に隣した旧世界の機能を持っている真っ白な街、、白の街。南斗宗家内部の人間でもあるリハクの手引きにより、そしてまさかの天帝軍の助力も得て、この白の街はあっさり…

143.

荒野を一人行くケンシロウの後を、その男は追っていた。 男はケンシロウとの戦いを思い出す。北斗神拳は闘神の化身とはよく言ったものだと、そう感心するしかなかった。あの強さは他に喩えようがない。昔この目で見た拳王ラオウの剛拳も「神」を彷彿とさせる…

142.

シンは上げた右手をピタと止め、次いで膝を一瞬だけ脱力した。自然に下がる身体操作に加え、南斗聖拳の氣をシンならではの解釈の元、「南斗紅鶴拳」の斬撃を放つ。生憎その比較対象はもうこの世に存在しないが、その拳の速さと鋭さは本家に劣らないものだっ…

141.

「おぉ、、この子だけは!この子だけは!」 老人は必死の思いだった。この非情な世界を何とか知恵を駆使して生きながらえては来たが、遂にその人生も幕を閉じる。それは構わない。ただ、この子だけは、孫だけは守らなければならない!両親を失い悲しみの果て…

レイ.30

「ありがたい」 そう言ったのはセイランだ。左手の指を二本失って尚、ありがたいと言えるその理由を知りたいところだ。 「やはり強者と拳を交えるということには大きな意味がある」と、セイランは口元に笑みを浮かべ俺を見る。もう既に、調気により奴の手と…

140.

「ケーーーーーーーン!!!」 口にかまされた轡(くつわ)を噛み切ったその若者の叫びは、遠く見守るシンの耳に届くだけでなく、その冷えた魂をも揺り動かした。 自分とは無関係な若者とはいえ、磔にされて非道な拷問を受け続けているその哀れで酷い姿を見…

レイ.29

息つく暇もない。そんなセイランの烈しい攻めを、俺はギリギリの間合いで躱し続けた。 奴の動きは直線的で、その速さを無視すれば単純で読みやすい。だが、速さを無視できるわけは、、当然ない。 ひとつひとつの移動ごとに十字斬を放つ攻撃主体の南斗鵷鶵拳…

139.

どれほどの時を聚聖殿での修練に費やしたか、、、 闇夜の山中、シンは仔細に至るまで自身の修練を振り返る。特に三面拳と共に技を磨いた日々を。 、、、、南斗聖拳に刻み込まれた無念さは事実であろう。故にシンは、ケンシロウに対してではなく、南斗聖拳の…