妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

153.

「どうだ?若造? イったか?」

「ぐ、、くう、、、」

苦悶に歪むガルダを見ながら「もう少しか」と、シュラインは静かに笑う。

「既に麻痺して動けないだろうが、秘孔の術の効果が完全に回るまで、あと少しある。その時が来たら叫べ。脳天に突き上げるような快感に声を上げろ」

「う、ぐう」

「おっと、快感ではなく、死の苦痛でだった」

ニコッ

その爽やかな笑顔に対し、「なん、、、、」と、ガルダは絞り出すように小声で言った。

「ん? うん〜?? どうしたぁ?」

勝利を確信したシュラインが、わざとらしい憐れみの表情で、苦痛に歪むガルダを嗤う。

「、、てね」

「?」

なん、、てね?

「ふん!!」

ガルダは力強く胸を張った!

丹田に力を込める!

シンと同じ銀色の髪が、噴き出すような炎のオーラと同様に激しく踊り狂う!

「な、、何!!?」

勝利の油断と、驚きがシュラインに一瞬のスキを作った。

そして!スキが生まれることを知っていたガルダ猛禽類のような手による合掌の一撃が、シュラインを撃つ!!

グァシッ!!

しかしだった!

それでも既に見切ったガルダの拳に取られるシュラインではなかった。

同様に合掌するようにして挟み込み、自身の胸の前でガルダの拳を止めて見せた。

「何故、、動ける?」

裂帛の気迫だった。

ガルダの気迫があまりに凄まじく、両手の力をほんの一瞬でも抜くことはできない。

下手に動けば、そのままガルダの合掌はシュラインの心臓を貫いて、そして焼き尽くすだろう。

「た、確かに秘孔の全てを突いた。何故動ける?」

ググッ、ググッとガルダの押しがシュラインの安全圏を割り始める。命に手を伸ばしている。貫き焼こうとしている。

「おっさん、安心しな。アンタのしつこい愛撫は気持ちいいところを外してないよ」

「で、では、何故、、」

形勢は逆転していた。見切って拳撃を止めたシュラインだが、そのまま必殺の一撃を押すガルダに、今や勝機があった。

「俺の南斗神鳥拳、、その奥義を会得するにあって、我が師となったのは元斗皇拳の男ガルゴ」

「、、元斗の」

「他流の、、それどころか天帝を蔑ろにした南斗だが、ガルゴは俺が戦場で供することを許してくれた」

ニワトリの足と揶揄したガルダの両手がシュラインの胸を貫かんと押し続ける。南斗の拳の斬れ味は触れるだけでも肉と骨を容易に断ち、絶つ!

「その元斗と何の関係が、、ある?」

しかし、、、

ガルダは黙った。すべきことに集中するために。

「おい若造、無視するな」

このシュラインという男は間違いない、俺よりも実戦経験が豊富だ。

西斗月拳自体もかなりのものだが、シュラインの強さは流派と才によるだけではない。単に数をこなしているだけでもない。

複数の秘孔を極めて必殺となす、と言いはしても決して綺麗に、華麗に、可能な限り安全に利を取って来たのとも違う。

大人ぶってクールに決めていても、隠せない泥臭さが匂うんだよ。西斗の鬱屈した想いかと思っていたが、、、同類なんだ、俺と。

だからわかるんだ。

このオッサンは話すことで俺の気を逸らそうとしている。

対して、、

シュラインも追い込まれながら、ガルダの力と氣が弱まる瞬間を探っていた。

集中がほんの僅かに切れる瞬間を、注意深くその呼吸から読み取ろうとしていた。

秘孔点穴術が効果を発していない謎を、とりあえず意識の隅に置いている。既に見切っている拳筋。焦りだけは禁物だった。

傍らから観ているだけのモウコにも、いやモウコだからこそわかる。

彼らの、このせめぎ合いの先に確実な決着があることを。


そして、その時が来た!