妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

163.蝙蝠

胸元に布でくるまった小さい命を預かり、私はヘンショウキ様からいただいた黒い翼で野を、山を、突き進みました。

南斗様同様、シュメにも生きて出ることは許されない、赦されないという厳しい掟があります。

破ってはならないからこその掟。それとも破るためにこそあるのか? というのは置いておきましょう。

 


私の「家族」ではないのですが、実にいい夫婦がいましてね。意外ですか?

南斗様に代わって雑務をこなすので、シュメってシン様が思われる以上に多岐に亘っており、わりと普通に暮らしてる者たちもいるです。

いえ、もちろん、「わりと」ですがね。ん〜ん、そうですね、宗教入ってる人ってところ〜でしょうか。違いますかね。

私も表の顔は白鳩さんでしたし。あ、すみません。脱線癖はもう治りませんね。

 


はい、、、、その夫婦にお願いしたんですよ。シュメとは言え、その夫婦には本当に些末な、それこそ使い走りのような仕事しか行かない。

決して暇ではなかったでしょうが、重要な仕事は任されなかった。それでも最低限以上の給与は保証されている。

でないと、無茶苦茶やる者も出ますからね。無茶やったら、もちろんアレですけど。

その彼らの子作りは別段制限はありませんでしたが、生憎、子がぁできなかった。

世間では都会砂漠だぁ、何だの言われてますし、私がよく羽を伸ばした夜の街にも、、あ、白い方の羽です、、結構な訳ありの娘たちも多くてね。

孤児院の門前に置いとくより、この二人に任せようと思いました。はい、この夫婦、シュメですが、血で汚れる仕事はしてませんでしたから。

 


どうしようか?とね、迷った時もありました。何かと申しますと、陰から遠くからといえ、血腥いコウモリに見守られてるって、どうだろうとね。

シュメとは言っても、この夫婦は何ら世の方々とほとんど変わらない生活をしている。いわゆる「常識」も持っている。

ならば、もう私は完全に手を離した方が、むしろ、いや当然その子のためになる。

ヘンショウキ様も、ホタル様もかの方も、ご理解いただけるはず。いえ、ご納得いただけるはず。

 


不思議なものです。こういう不思議なご縁というか、あるんでしょうかね。

南斗様北斗様はそれぞれ宿命をお持ちとはお聞きしますが、こういうの、きっとあるのかなぁ?

 


南斗様からの情報により、シュメは、世紀末大改変、すみません、戦争ですね。戦争の災禍からとりあえずは避難できました。

しかし、戦災に巻き込まれてその夫婦の女房はですね、亡くなってしまったんですよ、、、

そしてそう、、ご覧の有り様。あの戦争は全てを変えてしまった。生き残るより、爆発や何かで一瞬で逝けた方が幸福でもあったでしょう。

そのくらい過酷で非情な世になりましたよね。

生き残った面々で村を形成し、自足しながらも、決して安楽な生活は送れない。ただね、思うんです。

生きてるっての、こんなに実感できるのって、「昔」の一般の方々にはそうそうなかったのではないかとね。

一歩の踏み間違いが、死に直結する世界。もっとも、私たちにとっては、いつもそんな世界でしたけど。

ところが、その「現実」ってのが、あろうことか、生き残って助け合うべきはずの人間によってもたらされたんです。

 


GOLANってカルト集団、この時代初期にありましたよね? 変な軍服着込んだエリート気取りの変質者の集まりです。

この私もその夫婦に一度は任せた以上、干渉することを控えておりましたので、村を守ることができませんでした。

エリート気取りとは申しましたが、並の人間には到底太刀打ちできない訓練された正規兵。数によっては私でも楽な相手ではないかも知れない。

でね? ホタル様とかの方のご遺児を実の娘のように愛したその男ですが、ええ、妻を喪くした分、余計に愛情を注いでいました。

この時代に適応したのか随分と逞しくはなったようですが、戦闘となるとプロと素人では、もう比較にさえならない。

まだ幼い彼女の眼前で惨殺されたようです。

そして、です。この最悪の危機が訪れた村を救ったのが、胸に七つの傷ある男、、、北斗神拳伝承者ケンシロウ様だったんですよ。

 


どうです?

 


南斗様にて、悲劇の中に生を受け、シュメによって南斗様から引き離され、世界の全ての人々とともに大災厄に巻き込まれ、

滅びを免れて尚、、、かのような悲劇の舞台にまた登る、、、、、

心を病み言葉を失った彼女を私のツテで、とある村に導きました。

今度こそ、この時代にあっても安寧に暮してほしい。いずれかの不幸はあれど、それ自然であれば致し方なし。今度こそと、私は願いました。

 


甘くないんですよね、、、南斗様やシュメの生き方だけが甘くないわけではないんだと、よぉく理解させられました。

またもその村はどうしようもない男どもに狙われましてね、、、実際、略奪の果てに皆殺しを待つばかりの運命だったとか。

ところが!ですよ。その村には、、、あれれ、何故でしょう、目が潤むんですが、、、なんですか?これ。

、、、気を取り直して、、はい。

その村にはね、一度「死んだ」男がいたんです。並の男じゃない。並の男じゃないなんてもんじゃない。

その「力」を失っていましたが、その男はまだ「死んで」はいなかったんです。