妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

10.

この時代、全員が全員その日常を営みつつも戦士であるという側面が求められている。 理由は明白だ。 時代を考えれば警戒や守備は当然すべきことであるし、備えも万全を期すべきだが、それに加え具体的な敵がいるということだ。それがタジフという男を中心に…

9.

今思えば洗脳だったのだろう。神が見捨てたこの世紀末にあって「神は我々を選んだ」と説く大佐こそが彼にとっての神だった。洗脳でも全く構わなかった。愛する者たちを失い一人になった彼にはこの星のどこにも生き場所はないが、自ら命を終わらす気もない。…

8.タジフ

身長は190くらいある。それよりも横幅の広さだ。顔はでかいが、それを支える首の太さが普通ではない。岩だ。岩を彷彿とさせる、それがタジフだった。 拳王侵攻軍に配属されているが、拳王ラオウが聖帝サウザーとの睨み合いを続けている現在、中央から離れた…

7.村

「どこから来た? どこへ向かう?」薄暗い一室に入ると、決して威圧的ではない落ち着いた声で女が訊いてきた。「あてはない」両脇を抑えられながら生気に欠ける声で短く返答した。しかし、この短い一言が全ての真実だった。 「花さん、タジフのところのスパ…

6.警護責任者

「聖帝様!お休みのところ無礼をお許し下さい!」 ドアを蹴破る勢いで入って来たのは、この夜の統括警護責任者リゾである。非常時かも知れないが複数で聖帝の寝室に押し入ることには抵抗があった。それで他の兵たちは外に待機させ彼だけが飛び込んで来たので…

5.

シュバ! 血飛沫が舞い、蝙蝠の顔面に正確な十字が刻まれた。両目の下を真横に、顔の中央を縦に。眉間、鼻、人中、唇、顎の先端まで綺麗に南斗の帝王の裂気が鋭く通って行った。 不意を突かれたというのはあるが、警戒を怠ったつもりはなかった。その速さが…

4.

元は高層ビルであり、寝室は以前ガラス壁であったものを取り払った開放されたスペースである。 今夜は非常に穏やかで、時たまビル風が入り込むが、ほのかな香を吹き払うまでではない。 今この部屋を満たすのは香ではなくサウザーの威圧感である。しかし蝙蝠…

3.蝙蝠

広い部屋の中央にそのベッドがあった。無駄な装飾もなく、飾られる像の類もないシンプルな部屋で、広さを埋めるものがない。床面はキレイに磨き上げられ、壁面にある燭台の柔らかい灯りを反射している。 新しい世界の夜はまさに静寂であるが、この部屋の周り…

2.

宿命の地から離れたかった。北斗も南斗もない地へ逃げたかった。 離れられないことは知っている。逃げられないこともわかっている。南斗の男それ以外に彼の存在意義はない。しかし実質においては既にただの男であった。では彼はこれからどうなるのか。わかり…

1.ある男

前回から三ヶ月ほど経っている。 今までで最も長く間を置いた。失敗に終われば、またあの耐え難い痛みに襲われる。 彼ならば痛みというものをある程度心理的に制御はできるが、戦闘中ほど痛みに鈍感にはなれない。 「氣」を使わない痛み止めの術なら少しばか…