妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

5.

シュバ!

血飛沫が舞い、蝙蝠の顔面に正確な十字が刻まれた。両目の下を真横に、顔の中央を縦に。眉間、鼻、人中、唇、顎の先端まで綺麗に南斗の帝王の裂気が鋭く通って行った。 
不意を突かれたというのはあるが、警戒を怠ったつもりはなかった。
その速さが異常過ぎていた。
それでも蝙蝠は自らの溢れ出る血が黒い服に吸い込まれて行くのを痛みも忘れて嬉しそうに見ている。 

「極星十字拳。聖帝に抗う者に等しく与えられる死の刻印。だが今回は違う。聖帝のそばにつくことを許す。その許可の証として刻み付けろ」 

死を前にしても恭順しないであろう黒づくめの男に、どちらが主人であるかをわからせるための十字拳だった。
しかし蝙蝠は割れた唇のせいでやや話しづらそうに言う。 
「私は蝙蝠。闇夜を自由に舞う。私を飼うことは出来ませんよ」

「ふん、蝙蝠よ。ならば貴様に問うが南斗のサダメとは何か? 天帝守護の役割を言っているのか? それで南斗が天帝の地位に就くことはないと? そんなものは、はるか昔の一時代のことに過ぎん」
蝙蝠は顔を染める流血を気にもせずサウザーの言葉を待っている。
「そばに控えるのが嫌なら物陰からでもこっそり見ているがいい。貴様が何をサダメと思うかは知らぬ!訊かぬ! ただ、この聖帝サウザーがそのサダメとやらに打ち勝つときを見ていろ」
蝙蝠は顔の血を拭うと痛みで一瞬顔を歪めたがすぐに微笑し聖帝に言う。
「そう、、全世界規模でこれほど物事が大きく変化したことは人類の歴史にあっても恐らくないでしょう。過去は過去、、でしょうかね。さてどうなるか」
顔に刻まれたばかりのまだまだ血が止まらない傷を愛おしそうに撫でながら上目遣い気味に微笑んだ。
「いい置き土産、いただきました」