サウザーが力の全てを「斬」に注いでいればリュウガの身体は四つの肉塊になっていたであろう。あえて斬の力を抑えた分の余力が衝撃となりリュウガを激しく打った。
動けない、、、秘孔縛ではない。強い衝撃で身体がいうことを聞かない。サウザーが笑みを浮かべながら見下ろしている。
「ファハハハハ! どうしたシリウス? 南斗正統血統殿もついにこの聖帝に屈服したか? それともこの聖帝に己の愚かさを詫びるか。だが遅い。謝罪は受け入れん! 貴様には相応の死を用意してある。連れて行け!」
最後の一言は部下たちに向けたものである。
勝負あり。サウザーは敗者にはもう全く関心がないとばかりに背を向け、玉座付きバイクに歩き出した。
「グッ!」
背後からであろうとサウザーを倒したい。リュウガはなんとか力を振り絞りる。
隙だらけの背中に、、背後から背骨ごと心臓を抉り取りたい! そうすれば、乱世はすぐにでも終わる筈だ!
バッ!!
しかし、胸の十字傷から、その屈辱の刻印から血が吹き出し、遂にリュウガは倒れた。
強い、、、ラオウの拳は天を破る剛拳だ。あの非情の拳は全てを破壊して退ける最強の拳だ。だが!サウザーの拳はそのラオウの剛拳をも四つに斬り裂くのではないか、、、、、
視界が暗くなりリュウガは意識を失った。
サウザーはマントを再び羽織り、いつもの玉座にいつものポーズで座す。
実にいい。今日は実にいい日だ。
拮抗した勢力にあっては、時に二番手の者が勝敗を分ける。聖帝軍にはリュウガほどの男はいない。
だが、それも先程までの話。リュウガはこの聖帝に屈し、その運命は決まった。
「戻るぞ」
指揮モヒ官が合図を出す。包囲を解いた兵たちが元の通り、聖帝を中心に円陣を作って行く。
「聖帝様、リュウガの馬はいかがなさいますか? 非常に綺麗な毛並み。聖帝様のお体を預けるに相応しいかと」
「リュウガのお下がりをか?」
しまった。聖帝様の勝利に些か興奮していた。
ドッと冷や汗が出て来る。
「フン、捨て置け。あの駄馬が何処ぞへ戻ったとして、主がいない姿を見せれば、自然リュウガの身に何が起きたかを悟るだろう」
「ははあ!」と額を擦り付け聖帝に謝罪した。
聖帝様の機嫌がいい。やはりリュウガは強かったのだ。
そうではない。
サウザーは考えていた。
聖帝十字陵の外観はほとんど出来上がっている。あとは人柱だ。頂を積むのは南斗聖拳の血を引く者でなくてはならない。最も相応しいのは反逆のドブネズミだが、南斗正統血統リュウガも悪くはない。
何にせよリュウガの処刑は北斗神拳の終焉と同日になるだろう。ケンシロウばかりか、そこに南斗正統血統であると同時に泰山最高流派と言われる天狼拳の使い手リュウガをも人柱として土台に据えることが出来るのだ。
「フッフッフ」
実にいい日だ。
「フハハハハハハハハ!!」
天があなたを殺す、、、
蝙蝠の言葉を思い出す。
サウザーはまた大きく笑った。
天よ、この聖帝の前進、、どう止めるというのだ。