妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

34.

マントを脱ぎ捨て御座からサウザーが跳んだ。

スタッ、と着地したその悠然とした姿の背後ではモヒ官がマントを丁寧に畳んでいる。
身体に密着した黒いTシャツのような物を着ていた。その日の気分によりタンクトップ型と替えている。
胸の中央部には南斗聖拳の紋章に手を加えた十字模様、即ち聖帝の紋章が装飾されている。

サウザー、、、流石の威圧感である。拳王ラオウと並び称される聖帝。その名に恥じぬだけの男である。


「愚か者め。この聖帝の力をラオウより下と見たか。ならばこの聖帝サウザーの力、存分に味わい尽くすがいい」
リュウガの愛馬が嘶いた。先程のリュウガの天狼拳の氣には慣れているのだろうが、サウザーの異質で全てを切り裂くような南斗聖拳の裂氣には、リュウガと共に戦地を駆け抜けた戦馬も、ヒンと嘶いた後に退がって動きを止め、ほとんど石化した。


「この命を賭せばサウザー!貴様の命も喰らい尽くすことは出来る!」
「フフフ、ならば打て!撃て!討ってみよ!!」
周囲全てを圧する闘気。流石にサウザー南斗聖拳の帝王。
しかし!拳王ラオウのそれには及ばない。ラオウは自らの手でサウザーを斃したいであろうが、、、もらうぞ!


「行くぞ!サウザー!!」

南斗鳳凰拳に構えがないことは知っていた。無防備に見えてそうではない。守りという概念がない鳳凰拳は相手の攻めを攻めで退ける。
だからこそ、鳳凰拳には虚を突く速攻がいい。後手に出てはペースを握られそのまま圧倒されてしまう。
サウザーの頭部目掛けてリュウガの牙が襲いかかる!
斬るでも突くでもない、抉るという独特の拳筋だが、抉るべく手首を曲げた瞬間、、、サウザーは離れた!
疾い! だがすぐさま追う!
「いぃやあ!!」
必殺の間合いと見るやリュウガは牙の連弾ならぬ連抉を放つ!
「天狼凍牙拳!!」
リュウガ最速の拳を連続で撃つ! が!
一撃も当たらない!!
当然だった。サウザーはそこにいないのだから。
「フハハハハハ!!」
距離を取られている。考えられないことだ。あのタイミングでありながら間合いを外すとは。噂に聞くその疾さが想像を超えている。

「フッフフ、流石に拳は速い。だが届かなくてはどうにもならんなぁ。寒さも感じんぞ。 今度は、、」
反り返るばかりにリュウガを見下していたサウザーが前のめりの体勢に移る。
「こちらから行くぞ!!フハハハ!」
ギュン!! 右の突き!!シュン!!!
対してリュウガは左手でサウザーの突きを外側から打ち方向を変える。
隙!


ニヤァ
何がおかしい!?もう外しはしない!!
右の牙がサウザーの腹部を捉えた!!
ズ!!
「!?」
抉り取るどころか、、指が僅かに刺さる程度で進まない。
ムワッ!
猛烈な殺気を受け、リュウガは離れた。離れながらも防御の型は崩さない。だが、サウザーから見れば下がりながらの防御などは恐れ慄いて逃げるに等しい。
サウザーは腹部の血を指先でなぞり、その血を擦り合わせる。蒸発してパサパサになり粉と化す。
「効かんなあ。その程度の拳では、この聖帝の前進を止めることは出来ん! この聖帝の血脈絶やすこと叶わぬ!!」
サウザーがまた仰け反らんばかりに顎を上げリュウガを見る。身長ではリュウガの方が高いがサウザーの威圧感は遥かにその差を覆す。
「命捨てる覚悟で挑んでいても、俺の反撃を恐れたか。 甘い! そんな恐る恐る噛んだところでこの聖帝の不死身の体を屠ることはできんぞ!」
恐ろしい形相である。
「甘噛みで!」一歩強く前進する。
「この聖帝の!」強く二歩目を踏む。
「この鳳凰の!」架空の大鳥鳳凰が上空から獲物を踏みつけるような三歩目。
「はばたきを止められるか!!?」超速の四歩目!!!

固い地面を後方に撒き散らしながらサウザーが出る!!


一方、リュウガも流石である。直線で襲い来るサウザーに合わせ、今度こそ覚悟の一撃で迎え撃つが、、それこそがサウザーの罠。
「!!」
その両腕の牙拳を内側から弾き飛ばしリュウガを無防備の状態に晒す!!
その強い衝撃でリュウガは一瞬だが硬直させられた。


本気の殺気を纏った攻めは読みやすい。その瞬間にこそ最大の隙がある。サウザーの方がやはり一枚も二枚も上手であった。
「少しばかり寒かったぞ。遊びは終わりだ!!」
リュウガは腕を外側に弾かれた状態、それを為したサウザーも同様に両腕を広げた体勢である。
その腕を閉じながら交差する、逆式の極星十字拳!
鳳凰の怒りのはばたきが天狼の胸を十字に斬った!
「ぐあ!」
衝撃で撃たれリュウガは数歩退がると、その場に片膝を落として座り込む形になった。


そのリュウガの姿、、、それは見ようによっては臣下の礼であった。