妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

4.

元は高層ビルであり、寝室は以前ガラス壁であったものを取り払った開放されたスペースである。

今夜は非常に穏やかで、時たまビル風が入り込むが、ほのかな香を吹き払うまでではない。

今この部屋を満たすのは香ではなくサウザーの威圧感である。
しかし蝙蝠はというとまるで平然としている。度胸というよりも殺されることを全く恐れていないように見える。
「天が直に手を下すことなどありません」 

少し溜めて蝙蝠さらに続ける。
北斗神拳伝承者があなたを殺す」 
瞬間、サウザーの眉間の皺が深くなると同時に獣臭い空気が充満したかのような感覚を得た。 
それも一瞬で消え去るとサウザーは口元を歪めながら、
「ふん、あの出来損ないの伝承者がこの聖帝を滅ぼすというか。その拳神域に至ると謳われた北斗の先代も最後に大きな間違いを犯したものよ」と笑う。 
とはいえだ、ラオウの特質は北斗神拳伝承者に相応しいとは言い難く、次兄トキは病に侵されている上、北斗神拳を医療に用いたいなどとサウザーからすれば戯言をほざいているような状態である。
三男のジャギなどは論外。サウザーはその名前にさえ関心がない。
結果として消去法でリュウケンは末弟ケンシロウを選ばざるを得なかった、そう考えている。
だが、一応にせよ北斗神拳伝承者ではある。その奥義には達している筈。それがシンごときに完敗するようでは北斗神拳もいよいよ終焉のときか、といったところだった。


それにしても、、、いかに「あの女」にたらし込まれた状態だったとはいえ、それまで無敗を誇る北斗神拳に完全勝利したという事実は大きい。
奴の拳才もまた尋常ならざるものと認めていいだろう。惜しい男を亡くした者だ。
それはもういい。
元より最大最強最後の敵はラオウ
正当なる伝承者ではないものの北斗最強と呼ばれる剛拳は秘孔点穴の術を抜きにしても、この聖帝の完全な身体を破砕する力がある。
あのとき、こちらは奥義を尽くしてはいないが、ラオウも全てを見せてはいまい。
「次」は互いがこの乱世の半分を支配した時となるだろう。1から始めた帝王の歩みが、この覇道が50まで来た時、勝者は一気に100、即ち全てを手に入れる。
そのラオウを差し置いてケンシロウごとき小僧が聖帝を滅ぼすというのだ。あまりの下らなさに笑いが込み上げるが、それがだんだんと蝙蝠に対する殺意に変化して行く。

一方、蝙蝠はそんな殺意など気にする様子もなく相変わらず飄々としている。
「私はね、聖帝様。人の生死が見えるわけではない。いやもちろん、生命力に溢れる者と死にかけた者の違いくらいはわかりますがね。そういうことではないんです」 
戦闘になればあちらに勝ち目はないだろうに僅かな焦りも見せない男蝙蝠を見据えサウザーはその続きを待った。 
「北斗には北斗の、南斗には南斗の宿命があります。それを逸脱しては滅びるしか結末はない。聖帝様あなたは南斗六星の将、まさに帝王だ。しかし南斗のサダメを超えて成し遂げることなどありえぬのです」 
「貴様が何を知る」帝王は凄みを以って睨み付けた。 
「私はシュメ一族です。南斗のことをよく知っています。南斗じゃないからこそ中から見えないものがよく見えるんですよ」 
「シュメか、、、。よかろう下郎めが。飼ってやる。この聖帝が北斗神拳を滅し、貴様が言うサダメとやらに勝利し、この世の真の覇者になるその時を見ることを許す」 
ヒュッ!! 
サウザーがその両腕を胸の前で交差させた!