妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

10.

この時代、全員が全員その日常を営みつつも戦士であるという側面が求められている。

理由は明白だ。

時代を考えれば警戒や守備は当然すべきことであるし、備えも万全を期すべきだが、それに加え具体的な敵がいるということだ。
それがタジフという男を中心にした二十人程度の組織だと聞かされた。
「元々は拳王っつう強大な組織の末端だったようだがよ、この辺境の村など眼中にあるめえ?そうこうしてるうちに、拳王も聖帝っつう、やっぱでっけえ軍と揉めたらしいんだわ」
拳王といえばあのラオウだ。そして聖帝はサウザー。この新しい世界・時代に覇道を行く二人がぶつからないわけがない。
互いに牽制し合う緊張状態にあって、この山中の村など戦略的には空白地帯と言っていい。かまっている暇などないということであろう。
拳王への恐怖は絶大な忠誠につながるが、その恐怖の元がそこにいなければ、元々は暴虐の輩であるクズどもが規律を守る兵士でいる筈がない。
聖帝と睨み合う拳王がお忍びでこんな辺境に視察に来ることも同様にあり得まい。となれば末端の兵士達など容易に略奪を好む盗賊団になり下がる。


80人。

この山間の豊かと言っていいコロニーの人数は80人ほどだ。女子供に年寄りを併せた数はその半分を超えてくる。

まともに戦える人数といえば30人ほどと見立てた。
一方、今や賊と化していても一応は拳王軍として認められた戦士たちと正面からやり合ったなら、、、恐らく勝負にもなるまい。
利があるとすればひとつ、地の利のみだ。
村全体とすればこの人数を自給自足できるだけの広さがある。それを自然の障壁を利用したり、或いは有刺鉄線を張り巡らせた防護壁で囲んである。
頑丈とは言い難いが、これを登って超えるのは楽ではあるまい。逆に登る敵に対しては内側からは槍で応戦することができる。
出入り口は? 主に食糧調達に出る者たちの出入りに関しては敵が隠れるようなことが出来ない遠くまで見通せる場所に作られている。
しかし、実戦となれば想定外のことも起こるものだし、人を殺めることに慣れている野蛮な狂戦士にどこまで張り合えるか。
そして彼本人にとって最大の問題はまさに今の自分の状態である。「力」のない彼ではただの一兵卒にすぎないのだ。
戦い方、武器の扱い方は知っているが「力」の喪失のみならず肉体も弱ったままであり、左手は全く使えない。
そして超人的な「力」を有していただけに戦略には全く疎い。あの力はどのような戦略であろうと独力で覆すほどのものだったからだ。
以前は物の数にも入らないような雑兵たちに今は戦慄し、現実的な脅威と感じないわけには行かなかった。