妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

11.兄

鏡の前でポーズを作る。
表の世界のメディアなど斜めに見ているが、そんな無芸有名人の見た目の良さだけは認めるときもある。服の乱れを直し改めて鏡の中の自分と向き合う。

人気のあいつらと比べるとちょっと人相は悪いが、なかなかの男前だ。今日も決まってるぜ。
バタン!
「ジャギ様!!」
「あん?」
おいおい、ドアはもっと静かに開けるもんだろ。
「お、恐れていたことが!」
あ?、、まさか? いやまさかのあれか?
ケンシロウが!あのケンシロウ北斗神拳伝承者に選ばれました!!」
「んああ!?」

 


「ふぬけたか〜!!兄者たちは!!」
バカですか〜兄者たちはよ!?なんで押し黙っていやがんでい!!
話にならねえ!!まさか納得してるっつんか!?

 


「おい!おめ〜ら!ケンシロウの居場所を探せ!すぐに教えろ!俺はその間オヤジんとこへ行ってくっからよ!」

 


ハアハアハアハア、、、走って息切れするようなか弱い身体じゃねえ。焦りが息を上げさせる。なんでなんだ?
なんでよりによってあのケンシロウなんだよ!おかしいだろ!なんでラオウもトキも沈黙してやがる!?
伝承者争いに敗れた者の末路はさっき教えたろうが!
一体全体どういうことだ!?
どういうことだ!?
どういうことだ!?
どういうことなんだよ!?おい「オヤジ!!」
ドガア!
やっぱここかオヤジ!
「おいオヤジ!!どういうこったい!?」
「ジャギか」
ジャギか、、じゃねえよこのクソハゲ!気配で俺だって気付いてたんだろどうせよ!
「どうした?」
どうした?、、、じゃねえだろ!決まってんだろ!
「なんでケンシロウなんだ!なんで一番劣るあいつなんだよ!ああ!?」
「ならば誰が相応しいという?」
「そ、そりゃあ、、、」
俺じゃダメなのか?
「あのラオウ北斗神拳伝承者の道を歩めるか?トキは実のところ既に辞退していた。病に侵されていてな」

(※トキは死の灰以前に病に侵されていた説がある)
「はあ?病だあ?んなもん初めて聞いたぜ。つかだいたいよぉ、北斗神拳が使えて病気はねえだろう?」
北斗神拳も全能ではない。それに北斗がまことに神の業であったとしても、使う我らは人に過ぎぬ」
「、、、じゃあ、、俺と天秤にかけた結果ケンシロウだったってことか?」
「そうだ」
んだよ!随分とはっきり言うじゃねえか!
 「じゃあ、消去法かよ。いや待ってくれよオヤジ!消去法ってなんで俺は、、いやそんなに俺じゃダメだったんかよ?」
どうなんだよ?オヤジ。俺もラオウやトキと一緒に頑張ってたじゃねえか?技だってそこそこやれんだろ?なんでだ?

このガサツな性格か?

だが立場が人を作るってもんだろ?俺だって北斗神拳伝承者になりゃあ、そりゃあ色々と改めるさ。
「消去法というわけでもない。北斗神拳伝承者に最も相応しい資質を持つ者はケンシロウなのだ」
おい、オヤジもう呆けたんか?
「ジャギよ、第一お前はお前でラオウやトキよりも伝承者に相応しいと思ったか?」
そ、そりゃあ、、そうは思わねえけどよ。
「オヤジ、、、俺は落伍者だったのか?いつからそう思ってた?なんで最終選考にまで残したんだ?」
「お前の拳の才能は決して悪いものではなかった。いや、むしろ才能豊かとさえ言える」
オヤジ、、、
「だが、三人は別格だった。それは誰よりもお前が気付いていただろう」
「ふざけろ!ラオウとトキは仕方ねえ!それは認めるぜ!だがケンシロウなんて俺とやり合ったときボコボコだったろ?」
「あの時のことを言っているのか?」
「んなこたあいい!なんで俺を残してたんだ!?あのキムみてえに可能性ねえならさっさと放逐すりゃあ、、、、、あ、ああ、まさかあんた?」
まさかオヤジ、、まさか、そうなのか?
つまりは、伝承者争いに敗れた兄弟弟子たちをその手で始末させる。それを北斗神拳伝承者の厳しい道の第一歩にしろってか?


俺を伝承者の、ケンシロウの生き餌にするつもりだったのか!?


「フフ、、オヤジ。あんたの読みがわかったぜ。で、どうするんだ?ラオウやトキ、そして俺の拳や記憶を奪うのか?それとも新伝承者の役目にすんのかい?」
ラオウとは話し合わねばなるまいが、恐らく拳での話し合いとなろう。奴が自らの力に封することはあるまい」
トキ兄は?
「トキはあの優れた才と人格を以ってケンシロウを支えてくれるだろう」
「あん?伝承者争いに敗れた者は拳を封じられたりするんだろ?」
それが北斗神拳1800年の鋼と血の歴史だろうが?
「実のところ、、北斗神拳一子相伝の掟にも抜け道はある。考えてみろ。もし伝承者が斃れることあれば北斗神拳はそこで潰えてしまう。次代に伝えることが出来るのは一人。だが北斗神拳の使い手は一人とは限らない」
そうなのか?いや、そりゃあ、そこは考えたことくらいあるけどよ。一子相伝じゃあ伝承者が死んだら北斗神拳終わりじゃねえかってよ。
「このリュウケンの兄の話を聞いたことはないか?コウリュウの名を」
知らねえよ、誰だそりゃ?
ラオウたちは知っているぞ」
おい、、俺はハブられてたのか? 俺だけ知らなかったってのか?
「もういいぜ、、、いいさ。はん、わかってるって」
そうだよな、ラオウやトキになんて絶対敵わねえ。ケンシロウだってよ、あの甘い性格してなきゃきっと俺より強えんだろ?いや、それはねえよな?
でもな、本当はわかってた。拳の力だけじゃねえ。
いつからだ?心の中の口癖が「どうせ俺は」になってたのはよ。
自分でわかっててもこの時までここを抜けられなかった。北斗神拳を諦められなかった。


苦しかったしよ、腹も立ったしよ、ホント辛かった時もあるけどよ、、、楽しかったんだよ。
あいつらと北斗神拳を学んで新しい技を覚えると、世界がその度ごとに色を変えてくんだよ。

俺の思いが広い空を駆け抜けて行くんだよ。

あんな経験できる奴なんているんか?

サイコーなんだよ!


自分から離れるなんて出来なかったんだよ。


「わかったよ。でもよ、ケンシロウにこの拳を潰されるのは嫌だぜ。いやホント、ちょっと手はゴメンだな。オヤジの手で記憶を消してくれ。思い出は俺を生涯苦しめる。全て消してくれ。俺は廃人になっちまうだろうが、手があればなんとかなりそうじゃねえか」
俺にケンシロウを補助する役なんてできそうもねえ。かと言って逃げても逃げ切れねえだろ?北斗の宿命はどこまでもいつまでも追いかけて来る。
「ジャギよ」
あん、なんだよ。
「さ、オヤジ。さっさとどうぞ。痛くしねえでくれよ」
「ジャギ」
「なんだよ?ああ?覚悟決めたんだ!早くしてくれよ」


「お前に頼みがある」