妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

レイ⑦

明くる日。
居場所を失った俺は一旦この村を離れることにした。


ラオウがまだこの村を狙っている可能性はあるが、それを話したところでケンシロウは好き勝手動くだろう。それどころか特に当てもなくラオウを探しに旅立つこともあり得る。
だが、、、トキなら話が通じる。トキが残ってくれるならラオウも簡単には手を出せまい。

俺は先ずトキに自分が旅立つと伝えた。

「わかった。気を付けて行くが良い、レイ」
「ああ」
「、、、、」
「、、、、、、」
それ以上の話は出ないようだ。仕方ない。
「トキ、この村を頼む」
「、、、う、うぐ!」
「トキ!」
トキは激しく咳き込み始めた。少しして落ち着いたが口を覆った掌には血が付着している。
吐血、、、トキの状態は良くない。あの時は、耐え難い苦痛の中、俺の方が先に死んでしまうため、トキでさえ俺よりも健康に思えていた。
これはまずい。
トキの拳の冴えは俺も知るところだ。この世界では回避されたラオウとの対決を見るに、押していたのはトキだったのだ。
ラオウが自らの足共々に小刀で刺し貫き、トキの動きを止めても、つまりあの柔の動きを封じても拳技は拮抗していた。
だがだ、、、その出血がトキの体力を大きく奪い、捨て身の一撃に出ざるを得なくなり、そこをラオウに見切られた。
ケンシロウが秘孔縛を破って動けなければトキはあの場で恐らく、、。
もし、、、、
再度ラオウがこの村に押し寄せ、先ずは雑魚兵たちでトキの体力を奪い、弱った状態を討たんしたら?

「大丈夫だ」
「本当か?その体では、、、」
「そうではない。私を倒すためにラオウはそんな小細工はしない」
うっ! 俺の考えを読まれていた!?
はっ!! 違う! 思わず俺は自分の考えを呟いていたのだ! それを聞かれていた、、、
「私とラオウには同門として凌ぎを削った以上の因縁がある。宿命と言っていい。北斗神拳は一子相伝ラオウの拳は私が封じる」
「トキ、ケンシロウのためなのか?」
「それだけではない。だがこれは私とラオウの問題だ」
「トキ、、、」
「レイ、考えた結果だ」
「ああ」
「私の柔の拳も北斗神拳に根差している。故に教えることはできない」
「あ、ああ、そうだろう」
俺は意気消沈した。だが、この後トキはまさかのことを言い放った。
「だからレイよ、私との戦いで学ぶがいい」
「トキ! それでは!?」
「私の残り時間は少ない。今この私にできることは作ることよりも、残すことだ」
「トキ」
「だが私も一度は北斗神拳伝承者を志した男、拳士だ。手を抜くことはできない」
俺は戦慄した。トキと真剣勝負?
いや、もちろんこれは果たし合いの類ではない。トドメを刺すまでが勝負という決まりはないが、手を抜かないというのなら単なる試し合いでは済むまい。
「レイ、北斗と南斗は一体と言われても、同時に表裏の関係でもある。場合によっては真逆の方向を見る間柄。そなたが柔の拳を教えてくれと言った以上、、、」
「、、、、」
「危険があることを覚悟してもらう」
トキ、、、鋭い眼光。だが!俺とて洒落で頼んだわけではない! 思った形とは違うがトキの言うことに間違いはない。教えてもらう、、そんな甘いものではなかったのだ!
「わかった、トキ」
自分で吐いた言葉を無かったことにはできない。異端でも俺は南斗六星の一人。
「ご教示願います」