妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

12.

「オヤジあんた本気でそんなこと言ってんのか?」

どれだけ非情なんだ。俺の認識が甘かったのか?これが北斗神拳の道なのかよ。北斗の道に甘えはねえってか。
「この役目はお前でなければ出来ない。お前だけだ」
ふ、、そうかい。やっぱり俺はケンシロウの生き餌かい。やっぱり敗者、落伍者かい。
「これでケンシロウは変わるんかな?」
「都市伝説だが」
あん?何言ってんだ?都市伝説ってあんた。
「ジェザスを裏切ったジュダは、実は最も理解の深い弟子だったという都市伝説がある。預言を成すため自ら甘んじてその汚名を受け入れた。その後二千年にわたり、ジュダは裏切りの代名詞となっておる」
「俺にジュダになれってか」
笑けて来る。北斗神拳のために進んで犠牲になれと。あんたよくそれを俺に言えるよな。本当に非情だよ。師弟の関係だったし、下手すりゃ死んでるような修行の連続だったけどよ、深い仲だったろうが。
「昔を思い出してくれ。お前は実にいい兄だった。才能はある分どこか欠けていたケンシロウに人間味を体現して見せたのはジャギお前だった。ラオウもトキも超然としており人間というものを学べる相手ではなかった」
だな、、そうだった。あいつは天然だったもんな。

そうだな、ラオウはガキの頃から威圧的で怖かったし、トキは真面目すぎて話も合わねえ。
だがよ、ケンシロウはいつもニコニコして俺を立てたくれてたよ。知ってたよ。
俺もあいつと一緒にいるとき、楽しかったな、、、ああ、楽しかったな。
いつからだろうなあ?憎むようになったのは。蔑むようになったのは。


全て、俺の弱さが招いたことだ。


俺が強けりゃ、俺を抜いて行くあいつをひがまなくて済んだ。へっ、そもそも抜かれることもなかったか。


「わかったよオヤジ。俺しか、、できねえわな」
「すまぬジャギ。お前にしか出来ぬのだ」
ちっ、お前だけにしか、お前でなければって言葉で俺をくすぐる。でもよ、この頼みは要は死ねってことだろ。
「なあオヤジ。俺はよ、強ければなんだっていいって考えだ。北斗神拳だって時代に合わせて色々と武器やらなんやらを使ってったっていいだろ?どう思ってた?」
北斗神拳には大きな役目がある。しかし、同時に拳法であるというのも事実。そして拳法北斗神拳を超えんとするのは同じ舞台に立つ者たち。即ち南斗聖拳であり、泰山流であり、そして北斗琉拳だ」
何? 北斗リュウケン? 自分のこと?
北斗神拳の歴史はそれ即ち不敗の歴史。北斗神拳を拳法家として超えなければ、そこには相応の誇りもない。敬意も得られない。まして暗器に頼るなど論外」
論外か。ありがとよオヤジ。その全否定が今では逆に嬉しいよ。
「まあいいよ。任せろよオヤジ。いろいろ世話んなったな。今生の別れとなるだろうぜ」
楽しかったぜ、なんだかんだでよ。
「頼むぞ」
ふん。あっさりした別れだな。

 


「おい、ケンシロウ。お前伝承者に選ばれたってなあ?ふざけんなよ!おい!辞退してこい!誰が納得するよ?ああ?」

 


「北斗八悶九断!!」

 


うお!!!
「どうしました!ジャギ様!」
あ? ああ、、またか。またこの夢か。
バカヤロウ勝手に入って来んな。この顔見てたらお前死んでたぜ。
ちっケンシロウの野郎。あのくそ甘さのせいで俺にトドメ刺せねえから、おかげでこの酷い痛みを抱えたままだ。
あいつはまだまだだ。まだまだ甘ちゃんだ。まだあいつじゃあ北斗神拳の伝承者を名乗る資格はねえ。

もっと俺があいつを立派にしてやらなければならねえ。それが俺だけにしかやれねえ仕事なんだ。
うぐ!顔が痛え!


どうやる?


決まってる。もっとあいつをどん底に突き落としてやらなきゃあいけねえ。
苦しみと悔しさの極致を味合わせてやらなけりゃあならねえ。
あいつのためだ。北斗神拳のためだ。

 

あいつは北斗神拳伝承者にはまだまだだが、それでもあいつをボコれる奴なんてそうはいねえ。
ラオウはどっか行っちまった。トキも姿を見せねえなあ。

あいつのためだ。

 

そうだ!
奴がいる。奴ならケンシロウを地獄に突き落としてくれる。奴の拳ならケンシロウをぶちのめしてくれる。


あいつのためだ。


南斗聖拳荒鷲シン
気取っちゃいるが俺から見りゃ所詮奴も甘ちゃんだ。
ケンシロウとの付き合いは俺たちの次に長いが、なあに、あの女のことちらつかせりゃあ、すぐさ。

クックック、、友情もクソもねえ。あの女は本当に災いの元だぜ。


これも全てあいつのためだ。


それでケンシロウがおっちんだら、それはもう北斗神拳も終わる頃合いだったってことだ。心配すんなよオヤジ。そしたら俺が代わりの北斗神拳伝承者になって、そしていろんなアイディア取り入れて北斗神拳をさらに進化させてやらあ。
でもまずはあいつのために、あいつを地獄に突き落とさねえとな。

もう這い上がらねえような奥底に落とし込んでやらなえとあいつは分からねえ。

いじじ、、くそったれ!

今日は顔が凄え痛むぜ!


この痛みに耐えてるのももちろん、、

 

全ては、あいつのためだ。