妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

125.

「もう石像は見飽きた頃か? 場所を移そう」
と言い、バルバはこの円筒状の石室の奥扉を開けた。先にはまた薄暗く広い石道が続いている。

北斗神拳もまだ現在ほどの力は有していなかった。それでも間違いなく並ぶもの無き最強の拳。それと互角に戦い、力を認めさせた南斗聖拳
と、バルバは松明の照らす弱々しく、しかしどこか優しさのある光で先導する。

「この地まで北斗を追い、そして戦った偉大なる南斗聖拳創始者レイゲンは、その拳を讃えられ「セイケン」という尊称で呼ばれるようになり、南斗聖拳は新たな世代の伝承者たちが相戦いて互いに拳を高め合った」

 

蒼天の拳によると、そしてこれは公式設定にされたようですが、北斗神拳は日本に帰る空海とともに海を渡ったとされています。
となると、この妄天の拳の南斗聖拳もその時代に日本に?となりますが、この辺りは原作設定通りなのか否かは曖昧にしてます。

当然その時代よりも前に日本と大陸には交流があったので、一時期・一時代だけ北斗神拳が日本に来ていたというのもありでしょう。

 

「だが、、、か」
「左様。新しき伝承者たちは、誰もセイケンに並ぶほどの力を得なかった。届かなかったのだ。一方で!」
バルバの語気が荒ぶる。気持ちが入っている。
北斗神拳はそうではなかった!」
気のせいか、バルバの影が濃くなった気がした。気のせいではない、とシンは思い直す。何かしらの兆候を感じ取ったからこそ、そのように見えたのだ。

北斗神拳南斗聖拳は互角。ならばと血気盛んな一人の伝承者、セイケンの弟子が北斗神拳に挑んだ。 、、、だが! 結果はよもやの惨敗。南斗聖拳は見切られていたのだ」
「レイゲンの弟子も北斗神拳を見ていただろう。程度が低かったのではないのか?」
ギリ、ギリリ、、、と聞こえる音はバルバが奥歯を噛みしめているためだった。
「先ほど言った北斗神拳の奥義水影心。一度戦うことにより、南斗聖拳はその全てを知られ、裸に剥かれ、何もかもを奪われていたのだ」
まるで南斗聖拳を、暴行に遭った女のように語る。シンも、そのバルバの語り口に、影響を全く受けないわけではなかった。
どこまでも人を小馬鹿にしたようなバルバが感情と歯茎を剥き出しにして怒りを表している。そして気のせいではない。影は確かに僅かながら濃くなっていた。
手にしている松明の光が氣で揺れたのだろうか。そんか感じはなかったが、、、

「伝承者の一人を惨殺された怒り。そして北斗神拳対策を練っていたにも関わらず、南斗聖拳が一切通じなかったという不慮の事態」

シンも自身の経験から思い当たる。ケンシロウには一度自分の拳を見られ、そしてジュガイによっても南斗孤鷲拳は知られている。
自分の不甲斐なさが敗北理由の半分であるにしても、狂気を身に任せて、真剣勝負に挑んでいたのもまた事実。
もちろん、勝ったとしても得るものなどない状態だった。そうであっても、あの力の差は歴然としていた。


シン きさまの技は全て見切っている


ケンシロウの言葉が浮かび上がる。

はじめケンシロウはユリアが既におらず、俺が腑抜けていることなど知らなかった。
だが奴の口からは、俺の拳が衰えたことを示す言葉は出なかった。ただ、全て見切られていたに過ぎなかった、、ということだろうか。

「しかしながら、残った南斗聖拳拳士たちとて、ただ黙してはいなかった。北斗神拳打倒に執念の炎を燃やし、己が拳を高めて行ったのだ。見切られたなら、別の切り口から南斗聖拳を究めていくのだ、と」
バルバの影は元に戻っている。感情が昂ぶると影が濃くなるのは、どうやら間違いなさそうだ。

「ところがだ。北斗神拳も南斗の挑戦をただ座して待っていたわけではない。奴らは奴らで南斗聖拳を差し迫る脅威と見たのだ。次に現れる時は、また違った拳となっているだろうと」
と、石道が、また年代物の重そうな鉄扉に阻まれている。バルバはニヤついてた顔をシンに向けた。
「今度ははじめから「力」を使おう」
と、呼吸を変え、一気に重いであろう鉄扉を押し開いた。
「、、、、」
先ほどと様子気配が違う。氣を開放し力を増したのは同じでも、その氣が違う。南斗の氣ではない。似ているが、何かが違う。小出しにして何かを俺に見せようとしている。
その小さな戸惑いとも呼べないシンの心の変化をバルバは感じ取る。

「よいか?シンよ。これから言う言葉の意味はまだわかるまい。だがここで先に申し述べておく」
「なんだ」
「闇で斬れ」
「、、、、」
「闇を斬れではないぞ?  闇で斬れ、だ」
「闇で、、」
「案ずるな。その意味はすぐにわかる。そなたにはその才がある。だが物には順序がある。先ずは南斗聖拳の奥義を究めることだ」
「奥義を? まだ知らぬ奥義があるのか?」
知る限り南斗聖拳最高の奥義は南斗鳳凰拳の、あの飛翔技だ。シンもサウザーから直接体感した経験があり、サウザーケンシロウとの対戦では、その真の秘力を観てはいる。
それを超える何かがあるとすれば、ガルゴが言っていた、無心、或いは無想転生ということになろうか。

「いずれ、、、すぐにわかる」
と言ってシンを更に「奥」に導いて行く。

道は徐々に狭まり、その分バルバが持つ一本の松明でも不便はないほどに明るい。

すると、すぐにまた鉄製の黒い扉が二人の前に現れた。行く手を阻むではなく、早く自分を押し開いてほしい、そう願っているかのようだった。

「この扉の向こうは書庫だ。もちろん、雑誌の類が保管されているわけではない」
と、バルバは嬉しそうに話す。
書物、、、南斗聖拳の霊殿に保管された書物! 気分が浮つく。
「いかなる金銀よりも宝玉よりも、そなたにとっては価値あるものが、この中にある」

シンは初めてバルバよりも先んじて扉を押した。