妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

82.ソリア

帝都の将軍の一人、紫の闘気を操る元斗の戦士ソリア。
闘気の色味に合わせた紫の衣服と上級なマントに包まれた強靭な肉体の持ち主。
かつてファルコとの戦いにより失った右目は帝都の紋章が施された黒い眼帯で隠されている。

そのソリアの元にある報せが舞い込んだ。

反乱勢力狩り、主に南斗聖拳狩りに勤しんでいた青光のボルツの軍が引き返して来ないという。


ボルツ、、、

天帝の威を利用したジャコウの命令を忠実に遂行しているように見えて、その実は殺戮と暴虐を楽しんでいるだけではないか、との疑いをソリアは持っている。
正統伝承者ファルコは天帝守護という元斗皇拳のサダメのため、ジャコウからの非道な扱いに耐え忍んではいるが、ボルツはと言えばジャコウと結託し帝都を離れれば好き放題だ。
ソリアはボルツを蔑んでいる。だがボルツの帰還が大幅に遅れているというのはこれまでにないケースだ。あの男には、いつも大体の帰還日を前以て報告しておく几帳面さがあった。
その表向き天帝に対する忠誠と偽りの生真面目さ故に天帝の声の代理者ジャコウから任される仕事は多い。


先日はボルゲのエリアも陥された。これまでエリアの一つも制圧されたことはない。それがここへ来て立て続けにエリアは陥されている。その勢いは陥落したエリアの民を吸収して増すばかり。

「これは最早ただの反乱ではない。時代の潮流やも知れぬ。北斗の軍、ここで叩いておく」
そう言ってファルコは帝都を後にした。

 

大袈裟なのだ!

ファルコもあのジャコウも。
北斗の軍? 北斗神拳
最強元斗皇拳の前にはそのどちらも無価値な石ころと何ら変わりはない。
ファルコも拳王の力を過大評価し戦いを避け、その代償に片脚を失った!

北斗神拳など敵ではないであろうに!

 

あのボルツとて人間性はどうあれ元斗皇拳の戦士。随分と熱を上げて南斗狩りに励んでいたが、そ奴らごときに敗れはしまい。

ならば、あの聖陰のガルゴが遂に滅ぼした北西の蛮人どものように旧世界の武器を扱っていたのかも知れぬ。
だが、北斗の軍が銃器の類を使用したという情報は受けてはいない。主力はあくまで刀剣類だ。

とは言え、極々僅かに残った銃器に討ち取られた可能性はあるが、銃であるなら元斗の氣で銃身を逸らすなど容易い。
遠距離狙撃か地雷か? それもおかしい。そのような武装があるならとっくに使われている筈。

 

ならば、、、北斗神拳か?

いや待て、北斗の軍は北から攻めて来ている。ボルツは今回南に向かっていた。無論、南にてボルツを討ち、再び北に戻ることは無理ではない。だが、その理由は?
まあ良い。ボルツは所詮その程度。程度に相応しい兵しかついて行かない。

だがファルコは違う。何もかもが違う!
ファルコは随分と拳王を警戒したようだが過大評価も甚だしい。拳王に勝ったというケンシロウも所詮は穢れた拳の使い手に過ぎぬ!

北の市都にはファルコが向かった。これで今回の件は終わりだ。

「失礼します!」
と兵が勢いよくドアを開けた。ジャコウ直轄兵。真っ黒な武具の色だけでなく、「顔の悪さ」でわかる。何を慌てることがある?
「どうした?」
兵は片膝を着き報告した。
「は! 北斗の軍本体が北の市都に接近中! 恐らく既に交戦が始まる頃合いと思われます!」
ソリアは笑った。
「それならその問題はもう解決済と言っていい」
「もう一つ!」
「なんだ?」
ソリアは面倒そうに応えた。ジャコウの兵は皆一様に気に入らない。将軍ソリアの前だから畏っているが、その素行の悪さはこの帝都に知れ渡っている。
元斗の男たちは光る拳を持つ。それに対し黒色即ち闇の色で兵装を統一するのも嫌味ったらしく思える。
もっとも、ジャコウの直轄兵だからという、それだけの単純な理由で毛嫌いしていることも否めはしない。

「一人! 恐らく北斗神拳ケンシロウも本軍とは別ルートでこちら中央帝都に向かっているとのこと!」
「それで総督はなんと?」
「ファルコ将軍不在につき、ソリア将軍に出兵せよとの命令!」
「承知した」

北斗神拳を凌ぐと言われた光の拳、元斗皇拳の奥義に達したソリアでさえ、同門ファルコの前には完敗を喫した。故にソリアはファルコより上の拳士などいるわけがないと信じ込んでいる。
そしてそのファルコは拳王ラオウを過大評価などしていない。その評価と警戒は正確だった。

拳の腕も立つ。武人・拳士の気構えもあり、ファルコからの信頼もショウキ同様に篤い。だが拳王ラオウを倒したケンシロウを侮り軽視しているのがソリアだった。

元斗皇拳初見のケンシロウを苦しめたが最後は拳を見切られ敗北。
しかし、死の間際にあってもソリアはファルコへの忠節を失うことはなかった。