妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

52.オマージュ

「おろろろ! ゆ、指があ!!」
全ての指を失いゴウダが慌てふためいている。

「どうだ? キサマの拳は南斗聖拳よりも上だったか?」
ゴウダは恐怖に縛られて固まり、迫るシンから距離を取れない。全身を冷たい汗が伝う。血と汗が混ざる嫌な匂いが立ち込める。汗より冷たいシンの非情な目が鋭い光を放ちゴウダから離れない。
「泰山に敬意を込め、奥義で葬ろう。はあ、、、」
両手を脇に閉め強烈な氣を込める。クワッ! シンが詰める!!


トドメの一撃は読みやすい?
な、ならば! 髪に隠した刃で後の先を取ってやるわ!
恐怖に呑まれながらも反撃を諦めないのは流石に泰山流のA級戦士である。
「おのれ!食らえ!!」

もちろん、、、そんな苦し紛れの一撃が通ずる相手ではない。苦し紛れは苦しいだけだ。
「おお!!」
頭突きの機を外しシンが間合いに入る!

 

「南斗!双龍咬!!」

 

ズド!!
シンの両手が分厚いゴウダの大胸筋に突き刺さる!

だが、、、
「??」

浅いではないか!? 南斗聖拳の奥義はこの程度なのか?


シンの指は第二関節までも達しない程度にしか刺さっていない。常人ならともかく、泰山流によって鍛えられたゴウダの胸の厚みならまだ耐えられる
「そうか! 破壊されたのは俺の指だけではなかったようだな!」

今度こそ!この刃の付いた頭突きで、と思い立った瞬間に、バッ!とシンが浅く刺さっていた指を抜いた。
即時に頭突きなどが当たろう間合いからは距離を取っている。指を染めたゴウダの血は撥水加工が施されているかのように流れ落ちた。

「奥義だと言った筈だ。俺が見据える先はキサマが上がれる舞台ではない」

「何をぉ!」
だが!

その言葉と同時にゴウダ胸の小さな十の穴から傷が放射状に拡がって行く。

 

要らぬ技と思っていた。
だが、北斗神拳と戦うなら浅い間合いによる一点打ちでも確実に倒す拳も必要だ。

無駄に氣を消費するだけの技と侮っていたが、奥義と呼ばれるその意味を知った。
無数の傷が、先の五指裂斬と同じように繋がり全身を覆った時、、
「た、たすや!」
スパ、、、スパパパパパ!! 跡形もなくゴウダは肉塊と化した。南斗聖拳を侮った者が迎える共通の運命である。
しかし、、これも北斗神拳を相手にするとなると、発動までの間を考えても、やはり実用的ではないのかも知れない。
シンの試行錯誤は続く。


氣と呼吸を調えバイケンに視線を移す。
バイケンからは先ほどまでの余裕は消え失せているが、その分スキも消えている。
「六聖拳の残った一人と思っていたが、、、貴様はかつてキングを名乗った男、南斗孤鷲拳のシンだな」
ギラン! シンが痛いほどの視線で問いに答えた。
「まさか生きていたとは、、、が!丁度いい! サウザーもシュウも死に、そしてここにキング・シンも死す! 南斗六聖拳が相手となれば、こちらも初めから奥義で向かおう!」
バイケンがゴウダと同じく両腕を広げ構えを取るが、そこからが別だった。
「フオオオォ!!」
大きな手を高速で、振り幅7,80cm程度に上下させ繰り返す。その振りの速さは徐々に増し、複雑で濃密な氣の異空間のようである。
「製造工場の機械のようだな」
とシンは言うが、決して侮れるものではないことは認めている。
「舐めるな! ゴウダと同じA級戦士とは言え、単にA級以上の称号がないだけだ。俺と奴とを同一視せぬことだ。行くぞ!」
バイケンが踏み出し間合いを詰める。

「泰山妖拳奥義!妖鬼幻幽掌!!」