妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

51.

「なぁにぃ! まだ南斗の残党が!」
「しかし、兵たちを一瞬で肉塊にするとなると結構なやり手じゃないですかい?バイケンさん」
興奮気味にゴウダが言う。既にやる気なのだ。殺る気、なのだ。
「まぁ、いいでしょう。愚帝サウザーが消えてなくなり南斗六星はもう一人。そいつがこんな所にいるわけはねえ。いたとしても愚帝とケンシロウの対決に姿も見せねえような臆病者。
となりゃあ良く見積もっても雑魚でしょう。この俺の¨爪¨で引き裂いてやりますよ」
「油断はするな。鉄のドアを斬るとなればそれほどの雑魚でもない」
「大丈夫ですよ。南斗聖拳は終わったんです。終わる時ぁあっという間ですよ。今後北斗神拳と並んで称されるのは南斗聖拳なんかじゃない」
「フ、まさしく泰斗の言葉通りか」
バイケンは道を塞いでいる恐慌状態に陥った味方の兵を「邪魔だ!!」と肉の残骸に変えて進んで行く。

「ペッ」

その後ろを付いていくゴウダが肉塊に唾を吐き捨てた。

 


「近い。蝙蝠、急げ。そこそこの敵もいるようだ」
「シン様、私の愛読書は「週刊跳躍ボーイ」でした。人気の脇役が主役を先に行かすために、その場の強敵を相手するという展開は漫画的で熱いんですけど、それ私の役目ではありませんか?」
「フフ」
思わずシンも笑う。
「逃し屋とやらと落ち合うのはお前の仕事だろう」
「いえね、シン様。貴方様との戦いで私も命を落としかねなかった。でも依頼は必ず成し遂げます。私が不在でもいろいろな手配は完全ですよ」
蝙蝠がシンに殺されていたとしても、その手筈に抜かりなしということである。
「蝙蝠、そうしてる間に後ろのお客さんたちは準備できてるようだが?」
蝙蝠のノリに付き合う。
「わかりました。ではお願いしましたよ?」
蝙蝠に先導されたキヨミたちを見送る。足元の凄惨な光景にえずきながら、少年は一度だけシンを振り向いた。


さて、、、
大きく息を吸い込み、暗殺拳南斗聖拳らしからぬ氣を発し自らの存在を敵に伝えた。

「ほおぅ、これほどの氣とは? なかなかの大魚のようだ」
二人の男が姿を現す。共に異質な氣の持ち主だ。二人とも身体がでかい。
黒い長髪の男が引き続いて話す。
「俺は拳王様に仕える三泰山の一人、妖鋼筋鬼キンプ・バイケン」
妖鋼筋鬼、、、聞いたことがある。泰山寺の中でも残忍な手口で「仕事」を遂行することで、裏の世界にもそれなりに名が知られた男だ。
「たが!」と隣の短いモヒカン頭に髭の男が間に入る。
「敗残南斗の相手をするのは、同じく泰山寺A級戦士!このゴウダ! テメエの名は聞いといてやる。名乗れ!」
南斗聖拳
「フフ、、そんなのは知っている。俺は」と氣を両手に集めながら歩を詰めるゴウダ。
「テメエの名前を訊いてるんだよ!」
ゴア!!
ゴウダの掻き取るようなでかい手がシンのいた場所を空振りした。
「チッ、腐ってもさすがに南斗。素早いな。むほあ!!」
氣をさらに高め、筋肉が隆起し服を内側から破り裂いた。
「我が拳は泰山寺拳法熊爪両断拳!!敗残南斗を超える我が爪の破壊力、その身で知れい!」
ゴウダが構える。立ち上がった獰猛な熊のように大きな構え。
「ゴアア!」
シンに襲いかかる!
一撃一撃は速く重い。威力も高い。シンがサッとかわした先にある壁面を豪快に抉り取って破壊する。その威力は本物の熊の比ではない。だがこの男は南斗を超える破壊力と言ってのけた。


その言葉の責任は、先ず取ってもらおう。

 

ゴウダの剛拳は空を切るばかりでシンにはかすりもしない。
「ちょこまかと!」と言いつつもシンを逃げ場のない隅に追い込んだ。
「かかったな! 俺を力だけの男と思ったか! くらえ!剛爪割岩!!」
身長差を活かして高くから両手をシンに向かって振り落とす! まともに食らえばシンの姿形も残るまい。
だが振り下ろすゴウダの手が止まる。止めているのはシンの拳、その指。ゴウダの十本の指に同じくシンの指が当てられている。
「グッ、テメエ!」
「俺を追い詰めたつもりでいたか? そうではない。わざと壁を背負いキサマのトドメを誘ったのだ。何故だと思う?」
ゾクッ、、本能的な恐怖からゴウダはシンから離れた。
「南斗を超える破壊力と言ったな」
シンから異様なまでの殺気が放出される。小石でも投げたら氣だけでもバラバラに斬られるような南斗の殺氣だった。
「だから、それが間違いだとわからせてやるために拳をぶつけた。そのために最も読みやすいトドメの一撃を誘ったのだ」
「な、なにをぉ、、、うっ、、」
ゴウダの指に赤い線が浮き出ている。それはすぐに出血を伴う無数の傷となり、、、
南斗聖拳五指裂斬」
傷と傷同士が複雑なネットワークのように繋がると、一気に爆ぜて崩れ落ちた。