妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

71.

肩にかかった銀髪をパッと後ろに払い、シンは再び構えを取る。

「諦めも悪いのか?南斗聖拳は。もっとも他の雑魚どもは諦めるも何も、その間もなく倒れただけだった」
とシンを笑いながら、ボルツはコダマが身を隠している建物の一角に視線を移し青い氣弾を放った。

バフッ!
「隠れてないで出て来い! シュメが!」
シンを試し、結果裏切ることになった罪悪感があるのか、暗い顔でコダマが現れた。
「あ、テメエはコダマ!」とダメージの深い身体ながら無理に声を張ったのはダンである。
一方、「フッ」と鼻で笑うボルツが話し出す。
「貴様の情報のおかげで南斗狩りが捗るわ!」
ボルツ、、酷い男である。コダマは南斗を裏切った者とはいえ自分の情報提供者である。それを用済みと見るやシンの前でコダマの裏切りを暴露し、その怒りに任せて始末させようという腹だ。
だが、そのシンはというとコダマを一瞥したが何も言わずに視線を戻しただけだった。予想していた通りだった。それだけだ。


コダマはシンに近付き思いの内を語る。
「赦されることでないことは十分承知しています。、、、しかしはっきり言います。南斗聖拳はもう終わり、、、、ではないでしょうか」
シンはコダマを振り返ることなくボルツの動きを見ている。ボルツの性根は知れた。また他所見すれば、それに合わせての不意打ちを厭わない男だろう。

「我々シュメも生き延びる道を探さなければなりません。私の全ては組織の中にある。家族も友人もいます。南斗様と共に滅びるわけには行かないのです」
コダマはシンの裂波の間合いにいる。「覚悟」は出来ているのだ。
「シュメの総意なのか?」
振り向きもせずシンは静かに問う。
「いえ、一部の者たちだけです。このことを知られれば我々は断罪されます。しかしシン様が敗れることあれば他の南斗様も滅びるのみでしょう。となればシュメは混乱することに」
「、、、」
「混乱どころか、、、南斗様にお仕えする以外に生き方を知らないシュメです。思い切った行動をする者も少なくない筈。そして我ながら狡猾なのはシン様の力に賭けてもいたことです」
「長いわ!!」
と口と氣弾を挟んだのはシンではなくボルツだった。
しかし、、、
バシィッ!!
シンの右手が青い氣弾を打ち消した。
いかに斬れ味鋭く熱い刃でも、南斗聖拳の裂氣密度が高い手刀にかかれば氣弾など容易く消し去れる上、今更単発で出したところで既に見切っている。
そしてやはり汚い男。あえてコダマに視線を向けた瞬間を狙って来た。

「もういい。お前が南斗を見限ったのも全てはこちらに責がある」
南斗の将たちの不一致は今に始まったことではないが、この新乱世になるや遂には分裂し、ユリアの生存は謎のままだが、それ次第では五星が消えたことになる。かつてない異常事態である。 
生き残ったシンとてユリアの情けと蝙蝠の尽力なくしてはここにいない。そんな不甲斐ない南斗に愛想を尽かしてもおかしくはない。

「たが、まだ答えを出すには早い」
熱い決意でもない。落ちぶれた南斗の生き残りである自分への怒りでもない。
起伏のない平坦な思いだ。
結論には早い、というただ事実としての言葉。

そしてボルツに向き直し、
「初めての元斗皇拳、先ずは存分に知る必要があった。たしかに見せてもらった。そして、キサマの拳は見切った!」
と強い視線で刺す。
「むう? 南斗如きが何をほざく!?」
侮辱とも取れるシンの発言にボルツの顔が歪む。帝都の将軍として作っていた仮面が剥がれ、その醜い本性が晒された。

元斗皇拳。とてつもない拳だ。だがキサマはその流派の力に頼っているに過ぎない。雑魚をいたぶって来ただけの拳に払う敬意はない」
「ふざけるな!!」とボルツは身を震わすような怒りに任せて青い光弾を撃つが、今度は最低限の移動で見切って見せる。
口角を僅かに上げながらシンは言う。
「そんな魔法だけでは俺は倒せない。今度は「初めての」南斗聖拳、見せてやろう」