妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

70.

「まさかとは思うが、南斗六聖拳とあろうものが逃げ回ることを奥義とでもしているのか? 最高峰でもこの有様。やはり数が多ければ質の低下は免れん」

安い挑発。
挑発をして来ても苛立って来ているのがわかる。今まで人を顎で使うが如くにその場で光弾だけ撃って戦っていたのだろう。その「指示」に従わない男にいよいよ元斗皇拳も真価を見せるか?

下流の南斗など名を借りただけのもの。亜流とさえ呼べん」
このシンの発言に、二人のまるで別次元の戦いを見届けるダンの内心も複雑な心模様。容易に岩を砕くダンの南斗鵞獰拳も、元斗皇拳とそして南斗六聖拳のひとつ孤鷲拳との格の違いを見せつけられている。


「それでも意味はある。広く外部から人材や技術を吸収し、そして分派と競合により南斗聖拳は進化して来た。俺もまた南斗聖拳の一つの過程にいるに過ぎない。天帝のそばに控え続けていたキサマらとは違う」
とは言えここで敗れれば実質的な南斗聖拳は滅びるだろう。シンは構えを解かず間合いも保ったままである。油断はいつどこでも隙を見つけては心に入り込もうとする。

対してボルツは笑った。
「下らん! 変化せぬ者は滅びるだのという言葉を信じているのか。元斗皇拳には過程も進化もない」
そして力と誇りを込めて言い放つ。
「完成しているからだ。ゴミ拳法如きが謳うな!」

ズン!
ボルツが重い一歩を踏み出した。
「十分だ! 南斗最高峰の拳、まだ引き出しはあろうが取るに足りんと判断する。だが一定の価値は認めよう。このボルツ自ら間を詰めるのだから!」


名が知れた中央帝都の将軍は四人。
金色のファルコ
紫光のソリア
この二人はよく聞く名だ。
赤光のショウキはあまり聞く名ではない。
そしてこの青光のボルツはさらに聞く名ではなかった。
それが実力不足を意味しているかは不明だが、初めての元斗の拳に苦戦しているのも事実。シンはいつの間にか硬くなった膝を和らげる。

 

「では行こう。そしてさらばだ。元斗の奥義とくと見よ」
ボルツがシンに近寄る。遂に魔合いを破るのだ。元斗の奥義いかほどか!

 

シンもあえて距離を取ることなくボルツの接近を許す。しかし身体を柔らかい状態に維持することを意識から離さない。

「はああ!元斗皇拳奥義!」
青い光が眩しく閃輝し、ボルツの手が高速に動き出す!
しかし速さなら千の首を持つ龍を「飼う」シンにはさほどの驚きを誘うものではなかった。が、、、

巨体のボルツが素早く二人の間合いを詰める!

「流輪青光斬!」
「む!!?」
ボルツの腕の動きよりも遥かに疾く多く、無数の光の手が縦に円を描きながらシンに迫った!
ドッ!!
堅い地面を砕きながらシンが後方に退く。
中距離に離れ、次弾への警戒は怠らないがシンの革ジャンはボロボロに引き裂かれ、そして焼かれている。
直後!

ズバン!!
「おおう!」
一瞬膝が落ちるほどの衝撃。縦に四条刻まれている。幸いにして傷は浅いが氣圧によるダメージもあった。
「ブハハハハ! これが元斗必殺の流輪! 攻守に隙のない円の動きを高速で巡転させる! いや逆に褒めよう。流石逃げ足の南斗。よく生き延びた!」

危なかった、、、
少しでも身体を起こしていたら全身で光斬を受けていた、、回避は間に合わなかっただろう。そうなればいかに戦闘中で全身に氣を満たしていても肉片となるのは避けられなかった。
特異なのは腕の動きそのものよりも光の拳による斬撃の数が多いことだ。今まで見てきたどんな拳とも違う。

傷を負ったシンを見下すようにしてボルツは、「南斗如きに見切れはしまい。もう一度受けてみよ。逃げ続けてみよ! いつまで逃げられるかな?」と笑う。

シンはインナーまでもボロボロになった衣服を破り捨てた。胸と背中の十字傷が露出する。
ふとボルツが思い出したように言った。
「南斗にも触れずして敵を斬る小技があると聞く。何故仕掛けて来ない?」
そんなものが元斗相手に通用するとは思えないがボルツ自身は見たことはない。シンの戦い方にしてもあまりに消極的だ。元斗の威がゆえに近付くことさえ出来ないのだろうが。


シンに遅れて到着したシュメのコダマも物陰から二人の戦闘を見ている。
「シン様でもやはり敵わなかったか、、、申し訳ありません。お許しください。これもシュメが生き残るためなのです」