妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

69.

「どうした? 臆したのか?」
と言いつつもボルツも無駄撃ちはしない。この中間距離ではこの素早い南斗の男に当たることはないと理解した。
至近距離での初弾を凌いだこと自体がこれまでに出会った南斗の者たちとは異なる。中距離でさえもまともに回避出来た者はいないのだから。


シンは衝動的な男だ。
本音を言えば、連突きの弾幕を張って突進をしたいところだが、流石に今はそのリスクを考慮すべき状況。
だが一方でボルツに積極的に自ら動く気配はない。それが元斗皇拳というものなのか、或いはボルツの様子見なのかはまだ判断付きかねる。
シンにしてもボルツを軸に周るに過ぎず、格下が格上を相手にする構図が出来上がっている。

我慢比べだった。

ボルツとて無限に氣弾を撃てるものではない。ボルツが闇雲に撃ち放たないことがそれを示している。
いかに元斗皇拳といえど素早いシンを相手に氣を消費していては徒らに疲労するだけだ。

 

シンはかつて知るラオウとボルツを比較した。
先ずはっきりと言えることだが、このボルツにラオウほどの威圧はない。ラオウほど積極的に攻めても来ない。
体格は似ている。
氣は体内で練られる。強い内臓、丈夫な体幹がものを言う。
元斗皇拳の特性から言ってファルコそして他の使い手も似通った体格の筈。


体格が似ると言えば、南斗六聖拳も同様である。身長も体重もおおよそある一定の範囲に収まって来るのだ。
これにも明確な理由がある。
鋭い斬裂の他に飛翔軽功術の修得が必須だからだ。それも他流を凌ぐほど速く、そして流派によっては敵を酔わすほど華麗でなければならない。
いかに氣により常人の枠を大きく脱する運動が可能であっても物理法則を無視は出来ない。重い身体はどうしても速さを妨げる。
しかし、身長が小さすぎる、若しくは身体が細く軽過ぎては一歩の幅と練られる氣が小さ過ぎるため、南斗の「爪」も「翼」も中途半端なものになる。
上位の南斗聖拳会得のためには以上の問題を解決した身体的特徴が必要となるのだ。

 


シンにとって南斗聖拳は彼を彼たらしめる全て。プライドでもある。だが、今ここは自分を曲げてボルツの氣弾を躱すことに集中した。
持久力であれば大量の氣を用いる元斗に負ける筈はない。これも拳としての南斗と元斗の違いだろう。


必ずボルツが自ら動く。即ち「こちら」の間合いを割って来る。

その時、この元斗皇拳は何を見せてくれる?