妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

96.

「面白い! さあもっと見せてみよ! 南斗聖拳を!!」
とガルゴが詰める!
ガルゴもいよいよ高揚して来ている。

「良かろう見せてやる!」
シンが素早く前進し間合いを詰める!!


※2ページ目表紙
シンの直立した後ろ姿
背中にも刻まれている十字型に撃ち込まれたような傷痕
やや後ろを見返している


いかに南斗聖拳の突きに自信があっても闇雲に間合いを詰めていいわけではない。
元斗皇拳には強力無比な氣での防護がある。その氣膜を南斗の拳は貫くが、それで風船のように膜を割って消し去れるものではない。
下手に飛び込んだところを氣で圧され、ガルゴに反撃の隙を与えればそれまでだ。一度の小さなミスが命取りとなる。

先ずは間合い!

と、ここでガルゴがシンの思考の不意を突き、再び低い姿勢から間合いを詰めた!

今度は受ける!
迎撃!!

左脚を引き、先の構えよりも更に半身になった。ガルゴは一瞬だけ氣を輝かせてシンの視界を遮る。肉眼にも氣眼にも有効な目眩しである。
「む!」
シンに隙が生じた機を逃さず!ガルゴは低い姿勢のまま両腕でシンの前に出た右脚を刈り断とうと試みた。ライオンが爪で獲物を捕らえるような姿勢と爪を立てるような指の形。
シンの肉眼は確かに眩んでいた。氣眼も同様である。だが肌で感じるガルゴとの距離と位置ははっきりとわかる。当然その狙いも!

「ほお!」
シンは素早く身体を逸らせて背後に両手を突き、次いで狙われていた右脚を逃すように先に上に上げ、遅れた奥脚の左でガルゴを狙い撃つ!

南斗白鷺拳背転裂脚!!

ガッ!! 咄嗟にガルゴは両腕を防御に回し、氣刃のない脛を受け顎下からの蹴り上げを防いだ。
が、
シン全身のしなりを利用したその威力にガードした腕が跳ね上がる!
本家シュウほど綺麗に切断するような斬れ味はシンにはない。それでもシンの爪先に集められた南斗の斬気の殺傷力が比較して劣るということではない。
堪らずガルゴは身を起こしガードしながら退がる!
次いで距離を空けようとしたが、どれほど速く退いたとしても、体勢を崩しながらでは、それを追う方に大きな利がある。
増してそれを追うのは今や最速の南斗聖拳である!

取れる間合い!!

「南斗百斬拳!」

(※アニメ版にはこの南斗百斬拳を使ったキャラがおり、これを流派名と捉える人もいるようです。しかしこの妄天の拳に於いては技名としています。百裂に対して百斬があるというのも、自然な対称でいいと思います)

南斗百斬拳、、、北斗神拳の連突きである北斗百裂拳に相対する秘技である。
千の手、南斗千手龍撃と比べて単純に千と百だから劣る技ということではない。
敢えて優劣をつけるなら千手龍撃がより上位の拳にはなるが、連撃の速さを控えた分、一撃一撃に込められた力は大きい。
千手龍撃が無数の突きで攻防一体の「面」を作るのに対し百斬拳は全て狙いを定めた攻撃特化の拳である。


「くっ!」
シンの研ぎ澄まされた鋭い突きがガルゴの胴体を幾度か捉えるものの、放出される金色の膜がシンの接近を間際で抑えている。突きの全てが浅い。

だがいい。それでも幾分は優位に立てる。

一撃で極められぬなら少しでもこちらに有利な状況を積み重ねろ。それが「斗」を冠した拳士同士の、それも奥義に達した者の戦いだ。

直後!
「むぐ!」
油断!
ガルゴの膝下だけ動かす小さな右の前蹴りがシンの腹部に当たり追撃は途絶えた。ガルゴも上体を逃がしながらの蹴りのため、その隙を撃つ次の手は来ない。

一旦、間合いが空く。

シンは考える。
斃す蹴りではない。最速で打つ必要があったためか、それとも気配を読まれることを嫌ったか、元斗の氣は込められていない。恐らく、元斗の蹴りにあの光る氣刃はない。
だからと言って、それが元斗の弱点ということにはならない。氣刃がなかったとは言え、極限まで鍛えられた男の、氣で強化された速さの蹴りである。


「強いな。南斗聖拳
ガルゴの胴体数ヶ所に浅い突きが極まっているが、どれも致命傷ではなく既に出血も止まっている。調気法により止血したのだ。
更に、「むん!」と、両腕両肩の筋肉を誇るビルダーのように氣と力を込め、小さかった傷口を塞いで見せた。

一方でシンの方は腹部を蹴られた影響でむせ返るような吐き気があったがそれも一度だけ。影響はない。
残念ながら、百斬拳で与えた少しばかりの傷も同様にガルゴの動きを低下させるような影響はなさそうである。

 

互いに意識すること。

それは必殺の間合いであった。

南斗聖拳の尖突も氣の防膜を超えねばならない。

元斗の光刃も、中距離では南斗に撃ち消される故に直接拳で叩き込む間合いを取らねばならない。

多くの死線を超えたガルゴでさえ、南斗聖拳を相手にして生死の端境を見切るのに手間取っている。

 

そう、、、

それ故にガルゴは南斗聖拳を見る必要があった。