妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

109.

「そして、これが最後の一撃となろう」

ゆっくりと近付いて行く。ガルゴはシンが動けないのを知ってゆっくりと近寄って行く。

この世に斬れぬものなし!
黄光刹斬!
南斗聖拳よりも斬れ味鋭い我が拳、とくと味わうがいい。


斬られたことにも気が付くまい。ゆっくりとズレて行く己が身体を見ながら恐怖と絶望の中に堕ちるがいい。
本当に見事だった。本当の南斗聖拳、実に見事だった! こんなに恐ろしいほどの強さを持っていたとは!
弱い!
俺が苦戦する相手などこの世には元からいない。南斗聖拳などいくら究めたところでこの程度、このザマだ。
どうした?何両手を着いている?
トドメを待っているのか?
それとも命を助けてくれと?
言ったろう、この戦いは元斗と南斗の誇りをかけたものだというだけではない。貴様は天帝を脅かす危険因子なのだ。今は天帝に大きな関心はあるまいが、長ずれば間違いなく害意を抱く敵となる。
天帝などどうでも良い。俺にこれほどの深傷を負わせた貴様をグチャグチャにせずには終われない。
強く美しい男よ、せめて丁重に葬ることを約束しよう。
どうしてくれよう。グチャグチャにしても気が済まない。そうだ!下流の南斗全てをグチャグチャにしてやろう。あのガルダでさえも。
シン!俺はお前を忘れない。最強の敵として我が心に深く刻んでおく。

、、、、その時間はない、、か、、、、

 

張った氣の網目にガルゴが乗った。
、、、動かない。
更に一歩、ガルゴは寄った。遠くの雷光がそこまで迫ったガルゴの影を見せてくれる。
、、、、まだ動かない。その時ではない。


目の前でガルゴが立ち止まった。
顔を上げられないが、下を向いたままでも巨大な肉の迫力が感じられる。
ガルゴも探っている。動かないこちらを探っている。

そして、、、
「終わりだ。全ての」

ォーン、、、
ガルゴの右手が金色の光で染まって行く。そこに黒い陰はない。
それでもまだ、ガルゴはシンを探っている。この男がまだ何か狙っている可能性を無視しない。

ザァ〜、、、雨の勢いは衰えない。

シンの体内でざわめいていた微弱な氣が直列に並んだ。重なり合い増幅し合い無数の刃に合成される。
それを「遠くで」見ていたシンは「まだ早い」と感じた。ガルゴの最後の一撃に合わせろと。

カッ!!
雷光!近い!!
シンの意識は彼自身が自覚できない多くの情報から雷光のタイミングを予測していた。
強い光にガルゴの氣も乱れを生じ、最高の機を逸しての黄光刹斬となった。

左手で張った微弱な氣の網。その上を右手から発した強烈な裂気が疾る!
網の目全てに満ちた時、、、

ガガカア!!
ズバァン!!


ガルゴの刹斬が横薙ぎされる前に、足下から南斗の斬裂が爆ぜた。その爆音が雷鳴と重なり耳をつんざく。

「うぉお!!」

南斗地雷衝、、、体動なしの氣のみによる撃衝。その修得は困難であり、実戦の場で使う機会はほとんどないことから南斗孤鷲拳の中でも異端扱いの秘技だった。
その性質は南斗ではなく元斗に近い。
元斗皇拳との出会いがシンにこれを修得させたのだ。

青紫、、、
それがシンの「色」だった。
青紫の雨が降り注ぎ、、、これで、、、シンの氣は尽きた。

、、、、ーーーーーン、、、聴覚が戻って来る、、、雨音しかしない。

死兆星は消えたか? 俺は勝てたか?
上空を見上げようとしたが、力が入らずシンは膝を着けたまま前に倒れた。それは勝者の姿には程遠い。

「う、うぅ」
何とか顔を上げ、目を動かして暗天を見上げる。

そうか、、、

死兆星はこれまでにない大きさでシンの上にあった。

それが答えか、、、

ボワン

見たくもない二つの金色の光が勝者自らを柔らかく照らす。

朦朧とした意識でガルゴを見た。
地雷衝をまともに浴びたその姿は壮絶の一言に尽きた。
服は全て破れ落ち、脚は裂け傷だらけで陰部も裂けて欠損している。


あの様では、ガルゴも長くはないだろう。
だが、勝ったのはガルゴ。俺はここに突っ伏して動けない。奴は立っている。

俺は負けた。

だが、、、もういい。
やり切った。出し切った。
南斗聖拳は滅亡するが、もういいだろ。


ヌチャ、、、ヌニチャ、、、ヌチリ、、、
変な足音だった。その足が裂けているからだ。それで歩けるということが、奇跡を通り越した甚だ不思議な現象であった。

すまんなシン、トドメは刺さねばならん。
待っていろ、シン! この痛み!
シン、南斗の誇りと共に天に帰れ。
恥辱に塗れた敗者めが!
すぐ楽にしてやろう。
簡単には殺さんぞ!マダシヌナ!


立っている、そこに。
ウワンウワンウワン、、、
光が増して行く。まだ力があるのか。どうしてこんなに動けるんだ?ガルゴ。
輝きがピークに達した。どうした? 早くしろ。
何故撃たない? 何故斬って来ない?
何をしてる?

!!??

身体が反応した。
ズザン!

棄てていたのに、、身体がガルゴの光弾を避けた。

「がはあ、、はあ、はあ、はあ、、」

氣は尽きた。闘志も消え去った。
なのに悲しいことに生存本能が、、、生き長らえようとする身体がシンの意識を無視して勝手に動いていた。