妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

97.

互いに必殺の間合いを取れないため、可能な限り有利にことを運ぶべく、南斗元斗による拳の駆け引きが続いた。

シンは氣の消耗が大きい元斗の疲労を誘い、ガルゴは素早い南斗の脚が止まる隙を待つ。
、、、、拳を交わしてはいるものの、凡そ10分という南斗元斗の特性としては尋常でない長い様子見であった。


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一方は鋭い目のシンのアップのコマと全身
もう一方もガルゴの目のアップと全身


どちらが先に相手の拳を見切るか?
それを以ってどちらが先に仕掛けるか?
この二点が彼らの思いの中心にある。
互いに隙を作らず相手が焦れるのを待っている。

 


落ち着いている。
なのに熱くなっている。熱くなっている自分を冷静に見ている別の自分も同時にここにいる。

元斗皇拳は氣の消耗が激しい。あの光に、光るということに意味がないとは言わない。先ほどは目を眩まされてもいる。それに元斗の光は天帝の威光の象徴でもあろう。
しかし、暗殺拳南斗聖拳の見地からすれば光を発するというのはエネルギーが無駄に働いていることを示すに過ぎない。
持久戦に持ち込めば先に折れるのは、即ち勝機が見えなくても動かざるを得ないのはガルゴの方だ。


そして、、、
読み通り先に動いたのはガルゴだった。
氣の質と獅子を思わせる表情に微妙な変化があった。それを察知しシンも拳と思考を切り替える。

シンは、、、
これまで到達したこともないような拳の高みに、今いる!という確信があった。
同じ元斗のボルツを遥かに凌ぐ強敵ガルゴでさえ、その動きを読み切っているのだ。
だが焦ってはならない。これは高位の、いや、南斗と元斗の最高位にまで登り詰めた拳士の戦いだ。
あの時のケンシロウのように、サウザーを倒した時のケンシロウのように、少しずつ「詰めて」行け。


ダン!
ガルゴがついに魔合いを割って踏み込んで来る!
肉を抉り取るのか、焼き尽くすのか、凍り付かせて砕くのか、それとも所謂元斗の滅殺というものか!?

「おおお!!元斗「光」拳!幻輪!!」

ガルゴは自らを聖穢とし、その穢れた役目故に「皇」の字を負うことを拒んだ。無論それがシンにわかる筈もないのだが、、、

ガルゴが両腕を大きく速く回し、そして強く輝かせながら攻め寄る!
金色の氣の円輪。強い光に目が痛む。氣眼にさえ残像をもたらす数多の光の輪が幻覚を誘発する。

クワッ!
ガルゴが深く重い一歩を踏み出す!!
「豪!!」

しかし!!
獅子が獲物を爪で裂くような一撃必死のガルゴの上方からの右拳も、今のシンにははっきりと視えている!
読めているからだ!

バチチッ!! シンの弧を描く外受け!
南斗の裂気と元斗の滅気が当たって氣と音が弾け散る!
ガルゴの流れる輪の動きに合わせたシンの円輪の拳だ。金獅子の爪が銀の大鷲という極上の獲物から逸れる。

 

わかっている、、、左は下から繰り出すのだろう、、、獅子が獲物を咬み切るように、、、

 

バババッ!!
読み通り!
シンの右の、南斗の流輪がガルゴ下からの圧拳を氣を弾けさせながらまたも外へ逸らした!

 

いかなる反応よりも早い完全な予測故、シンはほんの一瞬だがガルゴに先んじることができる。
ガルゴの一撃目を払った左手で、、突く!!

 

ゾン!!

出の軽さ、その速さ、突き切った重さ、、間違いなくこれまででシン最高の「南斗聖拳」だった。
それでいて尚見事なことにガルゴは身体を捻り回避して見せる!
流石はファルコと共に元斗最強を誇る男。その勘の良さ、氣を読む感度の良さ、そして体格からは意外なほどの柔軟さ。

外された突きから発せられた裂氣が、その延長線上にある石の柱を穿つ。そして!

スパッ、、、
ガルゴの分厚い胸部が静かに裂けた。ガルゴの氣力が落ちる。一撃によるものではなく、ガルゴ本人の消耗だった。
ガルゴはやはり限界だった。


キーーーーーーーン
シンとガルゴ、南斗と元斗、互いの時が止まったかのようなその刹那、、、
勝敗の分岐点、針の先のような小さく鋭く尖った運命の分岐点に立っている。

 

ブワァア!!シンの右手が分裂し無数の突きとなる!
ガルゴの足掻くような咄嗟の守りの氣も全て撃ち砕く!
ガルゴとの間に氣の防御壁はない!

完全な間合い!
解き放て!!飢えた龍たちを!!

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

「南斗千首龍!!」