妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

101.

「やけに空を気にしているな、シン」
「、、、」

ポツ、、ポツリ、、
「む、、雨か」
雨滴が心に染みる、そんな顔をしている。
雨はすぐに本降りとなって二人を濡らして行く。
「雨を、、待っていたのか?シン」

雨、、この水を使えば伝衝裂波の効果を増すことはできる。しかしこの強敵ガルゴに対してはほとんど無意味、、、であろうか?

「そうではなさそうだな。いい雨だ。熱くなった身体を冷ましてくれる」

俺も休めたが、ガルゴもそう。消耗度は比較にもならない筈だが、、、、

「再開と行こうか。どうだガルゴ?」
「来るがいいシン」

行くとも、ああ行くとも!
「伝衝裂波!!」

ズバン!!
下から両手を斬り上げる!
南斗聖拳の裂気が飛び、空気を斬り、雨を裂く!
それを機械仕掛けのような速さと正確さで幾度か繰り返す。
裂波はコンクリート面に斬り裂き跡を残し、雨水を跳ね上げ、不吉な音を立てながらガルゴに迫る!

再度ガルゴが金色の闘気を纏って辺りを照らす。帝都からの光もない本来の荒野の暗い夜でも、自ら輝く剛健な姿を見失う筈もない。

「応!! 元斗「光」拳破輪!!」
ガルゴがシンの撃ち放った裂気を避けるではなく、受けるべく金色の光輪を流転させる!

避けるにしろ、受けるにしろ、この遠い間合いからの「楽な」手で倒せる相手でないことは重々承知!
しかし好機!!

シンは伝衝裂波の直後、小さな吸気で氣を練り直し、半分は軽功に、もう半分は突きの裂気として指先に集め、そして、、、神速で突進した。
最初の裂波は遅く、それに次ぐ裂波はやや速く、その次は更に速く、、とガルゴへの到達が同時になるように調整していた。裂波を全て同時に消殺するとなればガルゴの集中力も氣もその瞬間にピークを迎える。

そして、、、
地と空気と雨を裂く自らの裂波を追う!!
サウザーばりの神速前進を身につけたシンならではの新たな戦法即ち南斗聖拳の新たな秘技である。

裂波が裂き散らす破片と雨滴が織りなす金色の煌きの中をシンが疾る。シンの踏み込みで更に水飛沫が上がり、それもまた雨を金色に染め上げる。
ガルゴが伝衝裂波を受けた直後の空白を南斗聖拳渾身の突きで討つ算段!

金色の光が雨と裂波による飛沫で乱反射し目を封じる。しかも裂波そのものも南斗の裂気。肉眼のみでなく氣眼も封じる一瞬の有利を得る。
視界を一瞬遮られるのはシンも同じだが、光り輝きながら受けに立つ巨体のガルゴを見失うことはない。一方のガルゴはこの裂波の真後ろにシンがいることを予想していない。

神速で進むシンの顔にスローモーションの雨滴が当たる。目にも入り込むがその痛みは氣で満ちた身体に支障を来すことはない。
光の本体を狙う自ら放った斬撃が金の輝きを増し、必殺の間合いがそこにあることを示す。
その直後、斬撃が全て破壊されて光が砕け散った、、、

そこにいるのは無防備な金獅子!!

「む!?」
遅い! 取った!!

ガルゴは完全に嵌っていた。シンの罠、まだ名も無い南斗聖拳の新たな秘技に。

最後の強い一歩を踏み込むよりも先のシンの鋭さに鋭さを重ねた一撃!!

ドシュ!!
指先より飛び出す裂の衝撃が数メートル先まで「止まった」雨を斬り裂いた。

何故だ!?
またも!!

、、、斬り裂かれた雨が落ちる。
シンの耳に雨音が甦る。

「バカな、、」
どう考えても避けられる間合いではなかった。しかし此度もガルゴは、、、
強い雨の中、ボンヤリと輝くガルゴを見つめシンは思わず呟いた。

「それが元斗の奥義、影力それとも無心か?」

先ほどのガルゴの表情からして完全にシンの狙いは当たっていた。なのにあの状況からこの神速の突きがかすりもしない。これは違う。異常事態だ。
!、、その悲しげな顔、それは雨のせいでそう見えるのか?
全てを悟り達観したような顔にも思える。

「元斗の性質上、、」
ガルゴが口を開く。

北斗神拳ほどは究めることができない」
「何をだ!!」
シンが激昂する。理解できない状況を前に怒りが噴き上がる。ケンシロウの義憤と異なり強さに繋がらない愚かな怒り。

「シン、お前が今見たものは、、、」
ザァー、、、土砂降りだ。
遠くの空が、、厚い雲が光る。ワンテンポ遅れての雷鳴。
北斗神拳でいうところの究極奥義」
「究極奥義!?」

「無想転生だ」