妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

25.

気付けば全身に汗が噴き出ている。

そう、今さっき確かに取られたのだ。
相手が南斗の帝王とは言え、六将としてはあくまで同格の筈の男に完全敗北を喫した。
これが南斗鳳凰拳、そしてこれがサウザー


殺す


シンの内側に黒い炎が湧き上がる。
負けている、劣っている、サウザーがその気なら既に俺は、、、、

 

殺る!


「そうだ、それでいい。その目だ」
サウザーはまた距離を取り、深く息を吸い込むと悠然と立ち、シンを見下ろすように顎を上げた。両手の指をヒラヒラと動かしている。


舐め切っている


ブワァ!
殺気が溢れ抑えられなかった。こんなに闘志が湧き上がるのはいつ以来だろう。気付かぬ内に笑っていた。
「ほお、、いい殺気だ。満ち足りているな、ローンイーグル。敗北から自分を省みて真人間ぶるな。半分狂気に委ねているくらいが貴様には丁度いい」
「その余裕もここまでだ!サウザー!」
「どうかな?では行くぞ」
サウザーは膝の力を抜きほんの一瞬沈み込んだ。どれほど速かろうと棒立ちの状態から神速の動きに移ることは出来ない。体勢を整える瞬間が必要であり不可欠である。
サウザーの場合、その後の速さがシンにとっても未経験のものだった。
だが今は違う。それがシンの速さを超えていてもタイミングは掴んだ。二度も見た。その疾さを知ったのだ。
制圧前進の鳳凰拳ならば、ここで横に動くような真似はしない。必ず最短距離で来る。いかに速かろうと真っ直ぐに襲い来る的を外すことは、、ない!


グワッ!!
両腕を広げて空気を斬り裂きながらサウザーが飛び出る!!


迎撃!!
「!!?」
今度は違う。サウザーは低空ながら跳躍した。
神速の迅さも連続する足捌きがあってこそ。宙にあっては動きは取れない。
跳躍のせいでサウザーの突進に超越者にしかわからない程度の失速があった。ほんの僅かなスキが生じたのだ。


サウザー亡き後のことなど何も考えなかった。かの村のことも忘れてしまっていた。
ただシンはサウザーを撃つことにだけ特化した機械となった。
ドヒュン!!

シン最速の突きをサウザーに合わせる! 完全な間合い!! 神でもかわせまい!!!

 

!!?


「バカな!!?」
シンの最速且つ必殺の右突きが的の中央を貫く筈だった。外しようがないタイミングと距離に関わらず、その突きが素通りした。

いや、サウザー本人がシンを素通りしたような、、、?
フワリとした奇妙な感覚を残し、サウザーが「通り過ぎた」。
急いで背後を振り返ると、背を向けたままのサウザーが、やはり余裕ある立ち姿を見せつけている。
まるで理解不能だった。疑問を口にしようとした時、、
「これが南斗鳳凰拳だ」
会話にしても、いちいち先の先を取られている気がし、敗北感という黒い壁に隔てられる。
「勘違いするな。これは保険だ。貴様に鳳凰拳を託す気はない。万が一の保険だ。貴様がまことに鳳凰拳を会得する時があれば、その時は貴様も我が政敵となろう。雌雄を決しなければならんな」
サウザーは笑った。
「もっとも、、フフ、貴様は既に死人であったな」