妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

18.

「花さん、リマ。自らの命も顧みず、勇気を示した者たちよ」

敵に囲まれているにも関わらず、静かで穏やかで、優しい顔だった。
「そして自分たちよりも強いこの野蛮な男どもに立ち向かった戦士たちと、この恐怖に耐え続けた者たち」と村人たちを振り返る。
「真の強さを教えてもらった。ここからは、この弱き者が皆を救おう」


呼吸を変える!
南斗の氣を体内に満たす!!
熱い流れが血管を急速に走る!!
骨に、筋肉に熱が篭る!!

高揚感で身体が浮き上がりそうだ!!!


ブチ!!!!

ブチブチ!!!
バッ!!!


激痛と共に十字型の傷跡から血が吹き出る。
ブチブチブチ!!


「おおおおお!!!」
急激に力が戻った身体の拒否反応。激痛に対する叫び。
そして、、、
実感がある。確信がある。南斗聖拳を取り戻した歓びだった。

 

「ゴラア!!」
状況を理解出来ないのか、賊とは言え戦士の本能か。輩がシンに対し殴りかかる。
ガッ、、、シンは微動だにせずその一撃を顔面で受け止めた。
「うぐ!痛え!あ、れ?」
全く効いていないのがわかった。人間の骨を殴れば痛いものだが、感触が違う。喩えようがない何か、得体の知れない何かを殴った、、殴ってしまったようだ。その右腕が掴まれる。銀髪の男シンが鋭い目を向けている。
ポロ、、、ポロポロと崩れ、ボト、ボトボトと音を立て、右腕が落ちた。
「邪魔だ」


その男の背後にいた別の男の顔に血が吹きかかった。
「なんだ!?」
目の前の男の背中から突き出ているのは、、、指?
「え?」
それが最後の記憶だった。


「こいつは、驚いた。これが南斗聖拳か!」
しかし短髪の剣士ジライは恐怖に支配されていない。
だが!俺の剣ならこいつも斬る!
戦闘とも言えない一方的な殺戮を開始したシンのスキを突き、背後に回った。横に構えた刀。シンがジライに向き直ったが、、、
遅い! 間合いが全て! とった!!  一閃!!
「!?」
シンは鋭いその斬撃の太刀筋を読み、右の手刀を置いていただけだった。

ジライは回転しながら飛んで行く刀の先端を目で追い、それが地面に落ちたのを確認した。
そして手にした刀を改めて見る。既に村人たちの血を拭き取っていた刀身は日の光を反射して妖しく輝いている。

その愛刀の、信じられないことに物打(先端の方)から先がない。
思わず笑った。出鱈目だ。こんなのありか。
「ハハ、これが南斗聖拳か。ちょっとズルいな」
ジライの身体はバラバラの肉塊となった。


賊も既に三人を残すのみ。リマを踏みつけていた小汚い男を見る。
「え、あ、ちょ、ちょっと待って」
狼狽る男のみを見据え、リマに声をかけなかった。見ることもしなかった。もうリマが決して関わってはならない世界の住人に戻ってしまったからだ。

右手に南斗の裂気を込めた。


あと二人、、、、

赤い髪のモヒカンを睨む。
「キキキ、キング!俺は、、あ、あれですよ、あれ、、、スペードの、スペードの部下だったんすよ。知ってます?俺のこと、、ハハ」
やはり女長の花には一瞥もしないが、声だけはかけた。
「ちゃんと残骸は片付ける。これ以上はリマに見せないでくれ」
思考もままならぬ状態であったが、すべきことを理解した花は駆け出してリマを抱きかかえた。

ただ恐怖と、そして安心からなのか、流れる涙をそのままに放心状態のリマを強く抱きしめていた。


「ちょっと待ってくださいって!」
ダメだこりゃ、やられる! しょうがねえ、この世界のもう一つのルールだ。

 

殺られる前に、殺れ!!

 

とっておきのこれを使うしかねえ!!
胸元から拳銃を取り出した。
脅しが効く相手じゃあねえ! 構えて狙いを定めたら引き金を、、引け!!


パン!!


「えう、、えう、、えう、、、」
いかに銃弾の迅さを以ってしても、その機を見切れば避けるのは容易い。それが南斗聖拳だ。
もちろん、自分が銃弾を避けても、それが村人たちを傷つけない角度であることは頭に入れてあった。
そしてエースの眉間から鼻にかけての部位にはシンの左手が刺さっている。
「えう、え、う」
全く動かせなかった左手が「氣」の力によって使えるようになっていた。ぎこちないが状況に合わせて手の形を変えることに苦労はない。


ドサッ!
そしてあと一人。