妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

41.

「それは私が南斗様の熱烈に過ぎるほどのファンだからです。もちろん、シン様が腑抜けすぎて復活の見込みないようなら、そんな貴方は見ていられない。この手で壊すという思いはありましたがね」

蝙蝠は彫刻像の上でまた立ち上がった。
「やはり私ではシン様に敵わない。全く以って敵わない」
そうは言われてもシンはそれなりに苦戦している。危ない瞬間もあった。
「ですが最後にこれだけは試しておきたい。南斗蝙翔拳奥義を」
ブワァッ!と今までと違い軽さよりも力強さを纏って蝙蝠が着地した。
「我が師南斗蝙翔拳ヘンショウキ様が六聖拳や上位の流派に対抗すべく編み出した秘技」
白と黒の短刀を胸元にしまい、半身に構え蝙蝠が氣を溜めた。初めて蝙蝠が自分の攻撃に氣を感じさせた。
その時シンは理解した。蝙蝠の攻めに違和感があった理由を。
氣が込められていなかったからだ。氣を刃にする南斗聖拳ならそれがある種の気配となる。
だから蝙蝠は二本の短刀を使用することで氣を悟らせずに戦い、シンに氣による気配を読ませなかったのだ。
六星に匹敵する飛翔軽功術を駆使する相手が「聖拳」を使えない筈がない。シンとしても対六聖拳クラス用の戦闘モードにならざるを得なかった。
常人には真似できないその動きには南斗聖拳の氣を使っても、攻めの手には氣による斬裂を使わない蝙蝠の技にはシンの氣眼には「見えなかった」。
心理的にも盲点だった。蝙蝠ならではの格上南斗聖拳専用の戦い方だったというわけだった。

 

蝙蝠が動く!
距離は10mほど。短刀をしまい初めて氣を使うこと、いや、それ自体が何かの騙しかも知れない。

シンの様子見の最中、ついに蝙蝠は掌に氣を圧縮し、シンに向けてそのエネルギーを放出した!
「天稟掌波!!」
蝙蝠が右手を距離のあるシンに向けて突き出した!

クワッ!
だがシンが眼を、氣眼を見開く!
見えた! 三つの氣の刃が!
「フッ!」の声と共にシンは右手の連突きで着弾寸前の氣刃を一瞬にして砕き散らした。ビシシ!!
「あ!、、あ〜あ、これだもんなぁ。六星様は格が違う。ヘンショウキ様、申し訳ありません。蝙翔拳では六聖拳には届きませんでしたよ。やはり」
と、同時に今度はシンが出る。
「おお!?」
蝙蝠は右後方に逃げるが、シンが疾い。間合い!突き!
蝙蝠は覚悟したが、悪い気分ではない。むしろシンの完全復活が嬉しかった。その物語第二幕は直接観ることは出来なくなるが、この分なら駄作は有り得ない。¨一作目¨を超えることを願った。

しかし、、、

「、、、、シン様、なんで止めるのですか?」
シンの左手の突きは蝙蝠の胸の前で止まっている。
「まだ訊きたいことは残っている。それに、キサマは俺の命を救ったのだろう。借りを返したまでよ」
蝙蝠は笑った。シンの話し方には覇気が戻って来ているではないか。

「強い。流派の格も貴方様と私の拳の格も違いすぎる。南斗蝙翔拳をせめて動きだけでも六聖拳に並ばせようとして、全能力を軽功術に注いだのです。
攻めには短刀を使えばいいとしましてね。氣配も消せますし。ですが迷いを無くしたシン様には、その足元にも及びませんでしたか」
「いや、蝙蝠。キサマは強い。この戦いも俺を成長させるだろう。今の技ももらう。俺の役に立てるなら今後も力を尽くせ」
蝙蝠はキョトンとした顔でシンを見返した。口を半開きにまでしている。
「これは、、ファン冥利に尽きるお言葉です」
蝙蝠は目を瞑り息を整えた。様々な思いが交錯しているように見える。
「良かったですよ、シン様の今の攻め。燃えるような殺気は時に「重さ」になります。それがシン様の持ち味ですが、今のはほとんど無意識に間合いを詰めて来ました。
その気配が読めなかったためシン様の詰める速さに反応が遅れました。しかもやはり、前より明らかに速い」
「よく喋るコウモリだな」
「いえね?、北斗神拳には敵の殺気を感じて無意識に反撃する術もあるようなんですよ。しかし今のは本当に良かったです」

どうしてこの男は北斗の奥義にも通じている?

「南斗様にシュメあれば北斗様にもオウガあり。競合他社ですが「社員」同士、情報の共有もあるっちゃあるんです。あちらにも私みたいな変わり者がいますからね。私は正にコウモリ野郎です」
蝙蝠はまた笑った。始めの笑いより随分とましで厭味が消えている。
「あ、そうそう。シン様。私がお邪魔した本当の理由はお伝えしました通りシン様の復活を観に来たことです。ですが実はもう一つありまして、ご報告があります。」
「、、、」

 

サウザー様がケンシロウ様を撃破致しました」