妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

40.

貴方様を助けた理由。

それはこの私が他の誰にも負けないくらい、南斗様の熱烈なファンだからですよ。これは本当です。憧れ恋焦がれた南斗様の技を担うことは出来ましたが、その技をいただいたからこそわかります。私は所詮はシュメなんだと。
私は特に南斗六星様の大ファンなんですよ。理由はですね。あ、シュウ様だけは別です。あの方は本当に南斗の良心とも言うべき方。あれだけの腕がありながら決して奢ることなく、威張ることなく、南斗の繁栄を願っていました。人格者ですね。だからファンではありません。
サウザー様はサウザー様で南斗聖拳にあっても規格外の方。あの方のファンでもありますが、ちょっと異質ですかね。

ああ、そう。レイ様とユダ様の最後の死闘。見れなくて本当に残念です。南斗様にいただいたコウモリの黒い羽。この力でどこへでも気軽に出かけられるのですが、やはりそれでも身体は一つ。残念というより悲しいくらいです。
死の間際にあって遂に到達した南斗水鳥拳の極致、レイ様のその華麗さ。命を失ってでも憧れたレイ様の水鳥拳を見たい壊したいという愛憎両面を持ったユダ様。
観れなかったこと、これはずっと後悔するでしょうね。本当に残念です。

もうひと方、、、南斗六星のもうひと方については、私はここでは知らないとだけ申しておきましょう。


話を続けてよろしいですか?
南斗様は、その熱い感情故、大炎の如くに全てを焼き尽くすような力がありながら、その感情故に自らも消し炭のようにもなってしまう。その危うさがいい。シン様貴方は特にその傾向がお強い。

これも非常に残念なことに、貴方様がケンシロウ様を倒したお姿を見ることは叶わなかったのですが、ケンシロウ様だって甘いだなんだ言われてはいても、あの北斗神拳の伝承者です。

その方を一瞬で倒すほどシン様の力は突出していたんですよ。
そしてユリア様の歓心を得るため、乱世に変わったこの新しい世界をその力を以って駆け巡った。

その末にユリア様に与えたもの、この時代にしてはあり得ないような快適な住まい。数多の宝石や上等なドレス。忠実な侍女たちが身の回りを全てお世話する。
極め付けは街、サザンクロス! 王妃のために街を作るなどまるでお伽話の世界。


それでも、、、、
ユリア様の心を掴むことは出来ませんでした。
それはそれで話として面白いのですが、さらにシン様の物語を際立たせているのは、その意地、、、なんです。
ユリア様の歓心を得る方法はご存知でしたよね?シン様。それはケンシロウ様と同じことをするということ。
ケンシロウ様は少年時代からよく知る友人。しかし他流のライバルのような関係。一方は南斗、他方は北斗という表裏一体の暗殺拳
そしてご自分と相(アイ)対するケンシロウ様はユリア様をお選びになった。
どうしてもケンシロウ様と同じ道を歩むことができなかった。分かっていてもそれを選べなかった。そのお気持ち、その意地、よくわかります。
そこにあの北斗の死拳ラオウが迫る。ラオウ様と戦ってユリア様を守り抜くことは難しい。それで五車の面々にユリア様を託したわけですが、、、失礼しました。声がかすれましたね。普段はあまり話す機会がないので。
それで、、ラオウ様からユリア様をお守りするため自らユリア様のお命を奪ったという汚名を背負われた。
はい、申し訳ありません。あの時、私はその一部始終を見ておりました。やや離れた高いところから正にコウモリのように逆さまにぶら下がりながら見ておりました。

遠くて声までは聞こえませんでしたが私は唇を読めます。貴方様がユリア様を託した真の理由は気を失ったユリア様が発したお言葉でしたね。
貴方様はあの時、すべての終わりを悟ったのです。
ユリア様の心を掴むために走って疾って奔った。なのに作り上げた壮大な街サザンクロスは既に虚ろなる街。蜃気楼のようなものと化してしまった、というところでしょうか。
その死んだ城で貴方様はただ孤独にケンシロウ様を待った。ご自分の過ちを精算するためと果てしなく続く後悔を終わらせるために。


貴方様によって甘さを捨て北斗神拳伝承者の非常なるサダメに目覚めたケンシロウ様と、一方で戦いに勝利しても何も得るものがない貴方様。

振り絞った狂気で奮い立たせ対決に及んでも結果は当然の惨敗でした。失礼、あえて惨敗と言わせていただきました。
それでも北斗神拳の手にかかり命失うは恥として、自らユリア様と同じ場所から身を投げた。


素晴らしい!

 

物語として最上でした。完全なる結末でした。


でもですよ、ファンというものはタチが悪い。
もっと見たい!この物語の続きをもっと観たい!
ここで奇跡的にシン様が生き残ったなら!その復活劇を観ずにいられない!その物語の第二幕を期待せずにいられない!


だからお助けしたのです。


南斗の荒鷲と恐れられる力を有していても普通の人間と変わらない弱い心を持っている。
闘争渦巻く暗黒の世界で幅を利かせていても、この新しい世界になりキングを名乗って大きな組織の頂点に立ち不動の権力を手に入れても、それでも失恋一つで粉々に崩れる水晶のような純情さ。
クリスタルキング
シン様、、南斗様は強く!そして南斗様は弱いのですよ!

 


だから南斗聖拳は他の何よりも
美しいのです