妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

36.

「ならばシンよ。この石を南斗聖拳にて砕いて見せよ」


北斗神拳南斗聖拳源流直系孤鷲拳の関係は深い。他のいかなる南斗諸派よりも関係は近かった。
子供の頃からこの北斗神拳伝承者リュウケンは知っている。厳格で笑顔を見たことがない。
剃髪し法衣のような物を着るようになり、一気に老け込んだように見えるが、いよいよ時期伝承者を決定する頃であろうか。というよりもトキでほとんど間違いはないだろう。

ラオウではあの巨体で暗殺拳も不可能ではないか、とシンはいい加減に考える。
孤鷲拳先代(※フウゲン、ギシャクどちらでも。私はどちらとも考えていません。ボヤァとした影程度です)は既に己を超え慢心気味のシンに本当の強さを教示してほしくリュウケンを招いていた。
奢りこそが透き通るような南斗聖拳の斬れ味に靄をかける。


「容易いこと。我が南斗聖拳は全てを破壊する拳。こんな岩など、、」
自然岩ではない。試し割のため作らせたコンクリートの塊。2m弱のブロックだ。


シン十代後半、南斗孤鷲拳を身につけただけではない。他の上位流派も幾つか身に付け、若さの勢いに乗り怖いものなしの頃であった。
ただ突いて穴を穿つ、或いは斬るでは自己顕示欲を満たせない。

 


(※原作では各キャラの年齢は明かされておらず、ラオウ対決時のケンシロウは18だった、というネットの噂もあります。
自分は昔リアルタイムの頃、何をソースとしてその人は言っていたのかケンシロウ26歳、トキ28歳、ラオウ29歳とも聞いたことがあります。
修羅編でのハンの言葉からすると、二十数年前にケンシロウは幼子でした。とするとラオウ編18歳も強ち有り得ないこともないですし、普通の世界に生きているキャラクターではないので18でも、あの様子で別におかしくはないかも知れません。
ラオウ編から天帝編の間の年月はどのくらいだったかもはっきりしないのですが、リンやバットの成長からすれば結構経ってますね。
リンなんて初登場時は7歳くらいに見えます。後にはもう少し成長してそうですけどそれでも10歳くらい?
天帝編では若く見積もって15,6としてバットが20前くらいでしょうか。
この妄天の中ではケンシロウとシンは同じ歳としているので、このサウザー編時代で20代くらいと設定しています。
20代と言っても前半、半ば、後半とあるわけですがそれはあえてはっきりさせません。或いは30に達しているかも、、幅を持たせています。

そういうことで北斗の拳本編の年齢と矛盾が生じることもありますがハンが勘違いしていたということでお願いします。

18歳のシンやケンシロウって流石に若すぎるかなあと思いますので)

 


右の掌をブロックに付け、左手の甲を腰にあて、拳匠を気取っている。
そして急激に南斗の氣を掌に集めて、、、一気に押し込む!!
「衝破!!」
ドゴォ!!
コンクリートブロックは後方に砕け散った。


「うむ、見事だ。だが殺気が強すぎる」
そのダメ出しが気に入らない。
「我が南斗聖拳は殺意を破壊力に変えるもの。しかし確かに「殺気」が強すぎましたか」
リュウケンはシンの挑発的な発言に応える様子もない。
ケンシロウ、次はお前がやって見せよ」
ケンシロウは静かに肯くと、ブロックをコンコンと軽く叩きながら弱い部位を探り始めた。
「秘孔でも探しているのか?」とシンは軽い嫌味を飛ばす。リュウケンの存在がシンを無意識に神経質にならせ、友人であるケンシロウへかける言葉もついきつくなる。
一方、時としてケンシロウは無神経とも思えるような男だ。まるで聞こえていないかの如くである。集中しているとも受け取ることは出来る。
コン、コン、、コン、、、
ケンシロウの手が止まる。
そして、「ほおぉぅ、、、おあたぁ!!」の声と共に打ち出されたケンシロウの鉄拳がブロックをシンと同様に砕き散らした。

ゴッ、ガラガララ、、、
同じ結果を出したケンシロウが気に入らない。

ケンシロウ見事だ。だが、俺の南斗聖拳なら岩のツボを探す必要はない」
ケンシロウは口をへの字にして黙ってシンを見ただけだった。口がへの字なのはケンシロウが不機嫌だからではないことは知っている。こういう表情なのだ。
ケンシロウ、シン」
リュウケンがもう一つのブロックに寄る。先ほど二つよりも一回り大きい。


大きいから砕くのが困難というわけでもあるまい。若い俺たちよりも大きい岩を砕いて悦に入るのか?とシンは内心リュウケンを軽視した。
しかし、心底には北斗神拳伝承者が何をしでかすのかという漠然とした畏れもある。


リュウケンは静かにブロックに寄ると右手人差し指で岩に触れた。
あくまで静かだった。この時初めて小鳥の鳴き声や川のせせらぎ、遠くから聞こえる滝の音に意識が移る。それほどリュウケンの佇まいは静かで穏やかなものだった。
が、その時!!

「噴!」
ゴガァ!!
「!!」
シンは驚愕した。ブロックを破砕したのは同じだが破片が後方へ飛ばない。ブロックは一瞬内側に押し潰されるような様子を見せると内側から砕かれ真下に崩れたのだ。
これにはケンシロウも流石に驚きを隠せていない。よく知る筈の師の拳に未だ知らぬ力を見たのだ。
リュウケンはやはり静かに二人を振り返る。
ケンシロウ、これが北斗神拳の指突だ。そしてシンよ、陽の氣である南斗聖拳も、指突ひとつ極めるまでの道は遠い」