妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

94.

※1ページ目表紙
引きでケンシロウとファルコの戦い
バックは帝都の一部分と二つに割れた天


「あの二つに割れた天の意味がわかるか?」
ガルゴがシンに問う。

ケンシロウとファルコ二人の闘気がいかに強大でも、天空の分厚い雲をここまで分断させるのか?
似たような現象ならサウザーケンシロウの戦いで雷鳴と雹を呼び起こした場面を見たことがあった。
他にも砂漠のような荒野を一人で旅していた時、遠く地平線の彼方に一本の正体不明で巨大な柱が天に向かって伸びるのを見たこともある。
ラオウによる天に向けた最期の一撃だったと後にシュメから聞いている。
しかし、この割れた天は!?

「あれは二人の闘気が起こした現象ではない」
「、、、」
「あの二つに割れた天こそ、元斗と北斗が互いに「天」を背負っていることの証」

ガルゴの言葉、どう解釈したらいい?

「ファルコが天帝を護るように、また北斗のケンシロウも天帝を護っている。もう一人の天帝を」
「、、、二人の天帝だと言うのか」
「そうだ。天帝ルイには双子の妹がいる。その者は自分の隠された素性を知ってはいないがな。何より、ケンシロウもそれを知らぬ」
「双子?」
それに妹ということは天帝とは女なのか? もちろん男女の双子ということもあるが。

「面白かろう。元斗はその宿命・務めのために天帝を護る。一方で北斗も知らぬうちにまたもう一人の天帝を護り戦っている」
ケンシロウが、、」
南斗聖拳の軽さを実感した。シンが自分と南斗聖拳の強さを証明せんと強敵ガルゴに挑むのに対し、北斗神拳は圧政に苦しむ人々の叫びによって現れ、そのために戦いながらも、実は宿命に導かれ天帝を守護している?
いいや! 南斗聖拳は、、俺はまだ死んでいない!! 南斗聖拳の存在価値、その重みを増し加えるのはこの俺だ!!


「見ろ。分たれた天がまた一つに戻ろうとしている。もう少し待ってくれ。元斗と北斗、、そろそろケリは着く」

 

そして、、、

「夕刻前であるのに帝都が光り輝かない。決したな。元斗と北斗どちらが勝ったか定かではないが、天が穏やかさを取り戻している。少なくともジャコウの支配権は倒れ、「天」が望む形にはなったようだ」
と言い終えた後、聖穢ガルゴは立ち上がって肩を回し始めた。
「天帝は無事でも或いは成り代わっていても、ファルコが敗れていたのなら、元斗は今日で終わりということだ。俺の拳は汚れすぎていて元斗皇拳を伝えることは許されまい」
「いや! それよりも、ここで貴様は我が南斗聖拳の前に斃れる。勝ったのはケンシロウだ。俺にはわかる。そして元斗が滅びるのと同じ今日!真の強者の拳として南斗聖拳は蘇る!」
睨みながらガルゴに言った。

対しガルゴは静かに言い返す。
「俺の戦いは血で汚れている。血と脂と糞尿と、恐怖と悲しみと怒りと怨念と絶望と、あらゆる人間の穢れで汚れている」
「、、、」
「だが、これも天帝を護るためだ。もっと正直に言おう。天帝を護る元斗皇拳のため、更に言うならファルコのためだ」
「それこそ正に聖なる穢れか。それにしても貴様ほどの男にここまで言わすとは。ファルコという男、一度会ってみたかったものよ」
シンが呼吸を変える。

「もっともそれは、、、」
氣を練る。全身隅々まで新鮮な酸素と氣が行き届く。
「ファルコが既に死んでいては叶わぬがな!」

ガルゴも呼応し戦闘態勢に移行していく。
「これも面白かろう。あの大舞台の裏側では聖穢の拳と南斗聖拳が死闘を繰り広げていた。誰も知らぬ、歴史にも残らぬ戦いを!」
「表の歴史は知らない。だが南斗聖拳の歴史には貴様の敗北と死は刻まれる!」
「そうはならぬ。それにキサマがケンシロウの勝利を感じるように、俺もまたファルコの生存を感じている。元斗皇拳は滅びぬ! もちろん、かと言ってキサマがファルコに会うことはない!」
とガルゴが間合いを詰め始めた。
「南斗はここで滅びるのだから!」

なるほど、、、
確かに元斗皇拳とは違うようだ。両腕を下げ前屈みになって油断なく忍び寄るその姿は正に獅子。獲物を狙う獅子だ。
待ちと守りの元斗皇拳とは違う。これは「殺」の拳。殺人拳だ。

金獅子ガルゴ!

 

一方でガルゴもシンに寄りながら、まだ構えを取らないその立ち姿に感心していた。

空気に乱れがない。静かだ、あまりにも。
奴自身はあれほど高揚しているのにもかかわらず乱れがない。これが暗殺拳南斗聖拳か。
、、、、! 違う!!
そうではない。空気に乱れがないのは、既に圧縮されているからだ。そう!刃だ! 刃でぎっしりと敷き詰められており隙間がない。

 

面白い!これが南斗聖拳!!