妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

87.ケン

ケンシロウの「来い」を合図に紫色の戦士たちが一斉に襲い掛かった!

一番乗りの戦士が槍を全身これまでの最高の力と速さで突き出す!が、ケンシロウは表情を変えることもなく、瞬きさえもせずに手で軌道を逸らす。その手は速く、そして静かで柔らかい。
「!?」
まるで始めからケンシロウを狙っていないかのように自然と槍先を逸らされた。
この感覚は何だ?その瞬間!
「あたあ!」
ケンシロウの裏拳が横っ面を強打した。


デレレ! ヂャ!デレレレ〜デレレレ〜レ〜レ〜レ〜ジャガジャガジャン!
デレレ! ヂャ!デレレレ〜デレレレ〜レ〜レ〜レ〜ジャン!

YouはShock 愛で空が落ちてくる
「くっ!怯むな!」
今度は同時に三人の戦士が飛びかかる!
YouはShock 俺の胸に落ちてくる
「あたた!」
の一声で放つケンシロウの多数の拳が戦士たちの経絡秘孔を正確に打って吹き飛ばす!
熱い心 クサリでつないでも
今は無駄だよ

「ほおおう!」
ケンシロウが特異な怪鳥音を上げ、今度は自ら間合いを詰める!
不意に接近を許した敵兵が驚く間もなくケンシロウは人差し指で額を突く!
邪魔する奴は 指先ひとつでダウンさ
「うぎ、うぎぎぎ」と頭を抱えて倒れた。

YouはShock 愛で鼓動早くなる
ケンシロウが更に迫り来る敵兵を、得意の左半身前の構えで迎え撃つ!
YouはShock 俺の鼓動早くなる
「クソ!」
一際逞しい男が戦斧を横に薙ぐ!
捨て身の一撃、我が身を顧みない。
お前求め さまよう心
今 熱く燃えてる

ケンシロウは跳躍でその重い一撃を空中に回避し、戦斧男に踏み付ける様な蹴りを放ち、そのまま更に前方に跳ぶ!
全てとかし 無惨に飛び散るはずさ
着地点にいる戦士たちを「あたたあ!」と空中からの連弾蹴りで弾き飛ばす!
俺との愛を守る為 お前は旅立ち
「おのれ! 囲め囲め囲め!!」
残った全ての敵兵がケンシロウを囲む!
明日を 見うしなった
「ああ!ケンが囲まれた!」
「違う!囲ませたんだ!」
微笑み忘れた顔など
見たくはないさ

「ぬあああ!」
クワッ!
「あああたたたたたた!!」
愛を取り戻せえええ!
「北斗有情百閃弾!」

「おお!!すげえ!! さすがケン!」
一斉に全方向から襲いかかる敵兵を全て無数の拳打で文字通り弾き返した。
「ほおお」
呼吸を整え戦闘から通常へとモードを戻すケンシロウの周りには苦しみもがく敵兵が倒れている。
トキの有情拳のように死の前に快楽を与えるものではない。
ソリアの仇として、そして次に戦うことになるやも知れないファルコの為に、僅かでも、たった一条の傷でも残さんとした純粋とも取れる思いがケンシロウの拳から殺意を奪った。
例え無情非情な戦場でも北斗神拳の力を以ってすれば、命を奪わずとも戦闘不能状態にすることは容易である。

「ケン!」
バットが思わず声を上げる。
誰よりも戦いの非情さを知っているケンシロウが敵兵の思いを理解して無駄な殺を避けたことが嬉しく、そして誇らしい。
厳しさと優しさ、戦場においては相入れないこの二つを同時に為せる男がこの北斗神拳伝承者なのだ!
「ケン、、あんたって人は」
リンと共に駆け寄った。
「ケン」
ライダースジャケットは無事だ。破けてもいない。
「バット、リン。しばらくは麻痺して動けないが、後は任せる」
生殺与奪の権は北斗の軍二人のリーダーに委ねられた。後始末が面倒なわけではない。二人を試すのでもない。
信頼に値する戦士として彼らにその処遇を任せたのだ。

ケンシロウはおとなしく待っていた黒王に跳び乗ると黙って進み始める。
自然、彼に北斗の大軍が従った。