妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

64.


「俺だ! 俺は南斗聖拳108派の一つ! 南、、」
男が名乗り出て立ち上がった瞬間、ボルツは右手を自分の顔の高さに上げ氣を込めた。その手を青い優しい光が包み込むと、その手を男に素早く伸ばした。
ヴン!
「うっ!!」
放たれた青い光が男の胸を強打し、その衝撃が男の心臓の鼓動を止めた。
ボルツにとってその者が南斗聖拳のどんな流派、拳なのかなどほんの些細なことにすぎない。興味がない。どうでもいい。

「ああ!」
この街の最強護り人が一瞬にして斃され動揺が広がる中、更にボルツは続ける。
「他にはいないか?、、、、よろしい。こちらもこの街には南斗聖拳関係者は一人と聞いている。では今後のそなたたちの処遇を言い渡す」
これまでの生活は保証するが上納金が要求された。その額が非現実的である。
「出来ぬならば、中央帝都、市都、郡都そのいずれかに就業してもらうことになる。だが安心してもらいたい。もう一度言うが天帝は寛大だからだ」

どんな魔法を使ったのか?
この大男の手が光ったと思うと、、、
北斗神拳南斗聖拳というものが存在しているなら魔法があってもおかしくないのではないか?
住民たちの不安の空気が重く濃く、息苦しくなる。

「この街にはしばらく我が軍が駐屯する。そなたたちがちゃんと恭順を示すかどうか、試さなければならないからだ」
「無理だ!無理です!」
中年の男が声を上げた。この街の長である。
「私はこの街の長、メラです。自分らの生活だけでギリギリ。余裕はありません。なのにこれほどの兵の方々を世話することは不可能です」
ボルツは優しく笑う。
「ハハハハ、わたしがこの数多い兵たちを食わせろと言ったか?」
仲間を殺されたばかりの恐怖と怒り、そして悲しみの中にある住民たちだが、その緊張が僅かに微かに和らぐ。
だが、、、
「ハハハハハハ、、、まぁ、、その通りなんだが」
ヴン!
青い閃光! 長が倒れた。
「きゃあ!!」
焦げた匂いが長の胸部から立ち込めている。

「天帝は寛大だが反逆の長を赦すことはない。天帝の僕である我らへの意見は反逆と解釈する。それは天帝に背く行為なのだから」

 


この哀れな、そしてこの時代どこにでもいる力なき弱者は悪の強者に翻弄されるだけだ。
拳王の恐怖の圧政が終わっても、また別の支配が始まるだけだった。短い平和な時代は終わった。確かに終わっていた。

 

 

神よ、、、、やめた。
ならば救世主よ。聖帝を滅ぼし、あの拳王をも打ち倒し、この滅亡の世界に短いながらも平和をもたらした救世主、北斗神拳伝承者ケンシロウよ。

かつて一度だけ遠くから見たことがある。あのケンシロウの勇姿を。

 

すでに、、、晴れ渡る空も絶望の灰色にしか見えない。この世界から色彩は失われてしまった。

「ん? その目付き、反逆者のものだ。我らへの反逆は天帝への反逆だと言ったばかりだろう」

ボルツの大きい手が灰色に冷たく光る。その光が目の前を覆い、全てが灰色一色になった。

そして永遠の暗黒が訪れた。