妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

115.

「それならだいたい予想はつきます。ほとんど確信的にです。ただ確定できる材料がないだけで、この考えに自信はあります」
謎の男、そうでなくば謎の組織か、、、帝都の有力者というナンフーのことを訊いていた。

「ナンフーとはナンフ「ウ」、、つまり南風。ミナミカゼです。そして強い南風のことを旧公用語で、、、、、サウザーと言います。厳密にはサウザー様はth始まりですからsouthとは違いますが。

でも南斗様の帝王を名乗られてたので、サウスのカイザーでサウザーの方がよろしくないですか? それこそミナミの帝王になりますが」

と蝙蝠は笑う。何かの冗談のようだが意味はわからない。関心もない。

それにしてもサウザーか。それは思いもよらなかった。しかしサウザーケンシロウに敗れている。それを遠くからだが確かに見ている。
その疑問に蝙蝠が答えてくれた。

「ナンフーという男は全身包帯巻きと聞いてます。しかも時たま中身が入れ替わるとも。入れ替わる理由は知りませんが、「ナンフー」、、そのものの正体はサウザー様の忘れ形見に違いありません。もちろん確証なしですが」
「あの時の?」
「はい、わかります。あの時まだ、5,6歳でしたよね。月日は流れましたが今でもまだ少年です。しかしですね、シュメの中でも南斗極星にお仕えする者たちは私たちとは別枠なんですよ。あ、私は現在シュメでありませんがね」
「そんな者たちが」
「意外に知られてないんですね。まあ下請けってこんなものでしょうか」
と蝙蝠は苦笑いする。

「シュメってのも大体の担当ってのが決まってくるもんですが、将星様にお仕えするのはシュメの中でも特別な方たちに限られます。少数ですが精鋭ですね」
のほほん、とした顔をして蝙蝠は続ける。
「その専属のシュメが当番制だか交代制だかわかりませんが、包帯の中の人を入れ替えながらやっているということです。しかしですよ、あの精鋭たちがそんないい加減なことをするのもおかしなことで」
「わかる者にはわかるというある種のサインか、、、、。 その者たちが今尚サウザーの子に仕えている、、、」
「シュメというのは南斗様にお仕えするそれ以外の生き方を知りません。一つの駒として生きることを生まれた時から学ばされていますから」

そうだろう。そして蝙蝠はその中では異例中の異例と言ったところだ。シュメでありながら南斗聖拳の一つを身に付けている。それ故にシュメの組織から除名され尚且つ命も狙われている。

「ですので、自分たちがお仕えする南斗様には、いてもらわなくては困る、というわけです」
「、、、」
「こう言っては何ですが、南斗様とシュメの関係は主従であっても結局利害ですからね。ただ、このような事態ですよね? 中には南斗様を切り捨てて新たな道を探すべきとする方たちも遂に出てきたとか」

それが先日出会った何とかという男たち革新派のことというわけか。

「ところで、、、今までお前は何をしていたんだ?」
「はい、、」
声のトーンがやや低くなる。この男蝙蝠ならこの時代でも比較的楽に生きられる筈だが、ただ無意味に日々を過ごしていたなど考えられない。
「その内、説明させていただきます。今はご理解下さい」

クルマを更に進ませる。
人の住まない、「変換期」の爪痕を深く残す荒んだ街の跡が見えて来た。

「シン様」
「何だ」
「お身体の状態どんなものですか?」
「明日には軽い戦闘が可能になる、、、くらいだろうか」
自分の身体を内観した。ガルゴ戦の傷は、以前ケンシロウから受けた北斗の死拳ほど後遺症はない。あの傷は癒えるまで長期間を要した。
厳密に言えば、時たま完全に破壊された左手の動きが不自由なときはあるが、どちらにしても戦闘には差し障りない。

元斗皇拳の滅殺により損傷した部位は皮膚の表面だけで済んでおり、幸いにして回復は可能なものだった。受けた傷のほとんどは、氣の刃に斬られる、或いは氣弾による強い衝撃であった。
それ自体ももちろん軽くはないが、細胞が滅殺され治りようがないような状態にはなっていない。

「そうですか。食糧と水もまだありますし 、、、明後日、、、昼頃にまたお邪魔します。そして、申し訳なく思いますがその後私に付き合っていただきたい」
「、、、」
「会っていただきたい人がいます。いえ、会わせろとのことです」
「南斗宗家か」
「できる限りソフトに表現しても腹が立つ連中です。しかし、お怒りになって南斗様の拳をお使いにならぬように」
「どういうことだ?」
「シン様の思うよりも最悪の連中です。自分たちの保身のためにシン様の大切な方々を既に監視しているでしょう」

大切な人、、、
昔はそう言われても思い浮かばなかっただろう。それが今ではリマや花の顔がまず浮かんで来る。

「それなら先にそいつらを始末する」
「、、、、いえ、お止めになった方がよろしいかと。奴らの汚さは闇を舞うこの蝙蝠でさえ及ばぬものです」
「なるほど。蝙蝠お前も人質を取られているのか」

この問いに蝙蝠は答えなかった。