暗くて何も見えない。
狭苦しいチューブの中をもがきながら進む。そんな感じだった。
正確に言えば自分から前へ出ずとも勝手に押されるようにして先へと進んでいる。
やがて小さな光が見えた。それが徐々に迫って来る。あの光が出口。そうに違いなかった。
そして光に包まれ、、、、
「、、、イ、、、レイ!!危ねえって!!」
は!
剣を振りかざす男の姿が見えた。凶悪な顔をしている。周囲お構いなく撒き散らすような殺気で襲い掛かって来る。どうやら俺の敵のようだ。
ピゥ!!
鋭い南斗聖拳の斬撃が指一本一本から発せられ敵は輪切りにされた。
この光景を目の当たりにしても他の敵は次々と襲い掛かって来る。
「しゃう!」
敵を斬り、その先でまた敵を斬った。全ての敵が原形を留めない血肉になり果て戦闘は終わった。
しかし何故襲われたのか分からない。ここは何処だ?、、、見覚えはある。
それに俺を呼んだ声。あれはバットの声だ。
俺は声の聞こえた方に目を向けた。
「バット!リン!」
そして、、、
「アイリ!」
三人に駆け寄ろうとした時、大声が俺を止めた。
「おのれい!!我が部下たちを!!」
あの男は! そしてこの巨大な鉄板焼き。
そうか!そうだ!この街はあの時の!!
これは夢か。そうに違いない。でなくば死の間際に見るという走馬灯に喩えられるフラッシュバックか。そうでもないなら死んでから俺の罪深い生き様を振り返っているのだろう。
それにしても、俺の南斗水鳥拳を見ていながら恐れずに仕掛けて来るとは、、、
!!
そうだ!
ラオウだ!
この近くにラオウが、拳王がいる。
だからこいつらは俺よりもラオウを恐れるがため、俺へ向かって来ることを躊躇わない。
それにしても感覚は現実的だ。リアルだ。目に飛び込む光、吸い込んで膨らむ肺と腹、拳を握り込む感覚、足の裏が地面を蹴る感覚、、、!
全てがリアルだ。
!、、髪が黒い!
わからない、、、、だが、とりあえず夢であろうが何であろうが、どうやらこの分だとすぐにラオウも現れるだろう。
こんな大道芸人と遊んでいる暇はない。
「アイリ、バット、リン。すぐに済む」
これが夢なのか何なのかわかりはしない。だが、以前の繰り返しをここで経験できるようだ。ならば今は少しだけ賢く行動できる。
俺は大道芸人が火を吹く前に輪切りにした。
あの通りならこの後ラオウが現れる。