妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

105.

シン、、、
それは痛恨のミスだ。

宙に舞ったお前を氣弾で撃っても拉致が開かない。知っている。
直接に滅殺の拳をねじ込んでも、シンお前は宙にて躱す技を持っている。でないなら、身動きの出来ない宙に飛ぶ理由はない。
しかしお前はさっき、ほんの触りだとしても、その技を見せている。


光があれば影がある。
元斗の光は闘気。お前は出力の大きい我が闘気の限界を待ち、そこを狙った。
それは見事、正しい。

、、、、闘気は尽きても生命力はまだ残っている。

命を削って氣とし、そして心底に宿した暗黒を力とする。


影力


「!!?」
空中のシンが吹き飛んだ。
ビルの縁にある錆びた鉄柵に打ち当たり、それで尚勢いが消えないシンの身体が柵を折り破った。

 


グワァーン、、、、、

 

 

遥か下方、地上はほとんど何も見えていない。その時、稲光が照り輝き、まだ割れず部分的に残っている窓ガラスを反射させ、それが巨大なビルの全貌を浮かび上がらせる。
雷光を帯びた雨が美しい列をなして暗闇に吸い込まれていた。

 


何が起こった?

シンが絶対の自信を持って飛翔した時、、、
金と黒がまだらに混ざる、まるで巨大な手が空中のシンを捕まえていた。
ほんの刹那の時、シンは宙で静止し、直後に叩き付けられた。
それでもまだ余力は絶えず鉄柵を打ち破った。


雷光がその高さを認識させてくれる。
以前の「あの時」は受け入れていた。どの途、シンの肉体には北斗の死拳が打ち込まれていた。待っていても死は免れなかった。
あの時のあの高さは、元から半分死んでいたようなキングという男が抱える、絡み付いて刺す荊のような苦しみからの解放をさえ感じさせた。

今は違う。
暗闇が口を開けて俺を呑み込もうとしている。

血が凍る。
「くっ」


シン、、 貴様の拳はやはり少しも美しくはないな、、、
ユダ!? 黙れ!

強い だがここまで強くなっても負けるなら、シンよ、、それは拳としての南斗聖拳の寿命なのではないか?
シュウ!! ほざけ!!

俺もそうだった 間違った目的のために南斗の拳を振るっても本当の力は発揮できない
黙れレイ!! 俺は南斗の誇りのために!!

シン、、、、
やめろ!! 言うな! 俺を哀れむな! 俺を惑わすな!!

 

、、、フン、俺の真似をしていながら不様だな ローンイーグル

いつもの座りポーズのシルエットが見えた。

「そんなものか?」
その声だけが耳元にやけにはっきりと聞こえた。

ガシッ!
落下に移る直前に左手を伸ばし、鉄柵の折れ目を掴んだ。振り絞った全力で身体を引き寄せる。
鉄柵は根本から折れ、シンの代わりに暗黒の闇に落ちて行く。胸を打ち、両腕を命の縁にかけ、激痛を押して重い身体を生存の上に引き戻した。

ザァ〜、、、、
いや、そこは生存の上ではない。

絶望の地へようこそ。

とは決してガルゴが言わない台詞だが、状況的には言ってきてもさほどおかしくはない。
なんとか落下から逃れたが危機的状況は苛立つほどに何ら変わっていない。

この危機的状況を作り出している張本人ガルゴはというと、獅子のような顔に雨を受けながら黙って立っており、弱った獲物へのトドメに急ぐことはない。
シンは身体を内観し状態を確かめる。骨折はないが叩き付けられた衝撃で恐らく数カ所の骨にひびが入っている。
その他、皮膚に溶けたような剥がれたような損傷がある。表面だけの浅い傷だが、元斗の滅殺であろう。それ自体はどうということはない。
全身の打撲による痛みはあるが、戦闘になればほとんど軽減できるレベル。

戦闘継続は、、、可能。

しかし、、、、
鳳凰拳から着想を得て身に付けたシン個人としての南斗聖拳最高の秘技は、思いもしないガルゴのまさかの奥義に破られている。
そう、まさかの技に。
サウザーも奥義天翔十字鳳でケンシロウを追い詰めていたかに見えたが、遠隔にて秘孔を点穴するまさかの技に敗れ去った。
シン絶対の自信を持った技も、結果から言えば自信ではなく過信だった。

 

「、、、、」
それにしてもガルゴの先ほどの拳、、、既に拳技という範疇に収まるのかさえ怪しい奥義だが、そうは連続して使えまいとは考えられる。
しかし、それらの予測は外されてばかりである。
予測に勝る反応なしの教え、、もちろんその言葉には、その予測を外した事態のことも含めてある。
出し尽くしていた、、、、あとは状況合わせて最適な選択ができるかどうかだが、できたとして勝ち目は薄い。
それでも、シンには立ち向かうしか他にない。


と、ガルゴが暗闇から降りつける仄かな金色の雨から、生存を果たしたシンに視線を戻す。

「見事だ。あの場面から生還したか」

余裕なのか、身体と氣を休めていたのか、、、?

シンは再び対応力の高いリシャンロンの構えを取る。