妄想北斗の拳

妄天の拳です。北斗の拳のイフストーリーを南斗聖拳シンを中心に妄想してます。

22.

部屋の外ではリゾが中の様子を気にして終始落ち着きがない。

先程一瞬だけ南斗の氣が発せられている。まさかシン様は聖帝様を討ちに来たのか? 南斗の帝王サウザー様が簡単にやられるとは思わないが、、、
平静を保とうと努力するリゾだが、側(ハタ)からみれば少しも平静には見えなかった。


「拳と心の未熟さ故に、義星と妖星が既に地に堕ちた」
「!」
レイとユダが! それほど関係の深い仲ではなかった。特にレイとは数回会った程度に過ぎない。とはいえ南斗六星の二人が、、、
 「ユダはレイとの戦いの果てに斃れ、レイはその数日前、ラオウとの戦いによって死点を打たれていた。その秘孔術によって命を散らしたのだ」
ラオウ、、、とても勝てる気はしない。南斗にあってあのラオウと対抗できるのは、この目の前の男以外考えられない。
「だから憂慮すべき事態だというのだ。あのラオウ相手なら勝てないのは仕方ない。ならばその力量差を知り、戦いを避け好機を待つくらいはしなければならない」
サウザーが悔しさを顔に出している?
サウザーにしてみれば悔しいのは事実だが、それは単に南斗聖拳の名を汚されたという一点にすぎない。北斗神拳に負けたのが気に入らないのだ。
南斗聖拳の歴史はある意味、北斗神拳に抑え込まれてきた屈辱の歴史。見ようによってはそう言っても言い過ぎではない。
北斗神拳南斗聖拳は互角と言われていても実質は異なる。偉大なる師父オウガイが北斗神拳先代リュウケンと引き分けたことこそあるが(※妄想設定)、それまでは少なくとも北斗神拳に勝利した者の話は南斗聖拳以外の流派を含めても聞いたことがない。
その不敗の北斗神拳千八百年に一度は完全に勝利した者が、このシンという男ではあるが、、、、
「だが、物は考え様。弱き半端な者が失せることで南斗聖拳はさらに研磨されていくとも取れよう。南斗の拳士同士が相戦いて拳を高める。それも南斗聖拳だ」

北斗神拳を、ケンシロウを侮るな」

北斗神拳の強者と言えば長兄ラオウと次兄トキだ。なぜに未熟で甘いケンシロウが伝承者になったかシンには理解できなかった。そして現にその甘さ故にケンシロウに打ち勝った。
だが、振り返る。自らが教えた欲望と執念。シンからの敗北がケンシロウを成長させ、そして欲望と執念を超える怒りがシンを退けた。怒りに燃えたケンシロウの強さはラオウにも匹敵するのではないか?
すると更に思いがけないことがサウザーの口から発せられた。
「侮ってなどはいない。何せ奴は、あのラオウと引き分けたのだからな」
「な!」

ケンシロウが!
「そしてラオウは傷を負い姿を消した」
なるほど道理で。あの村からこのサウザーの本拠地までの間の半分以上は拳王勢力下だった筈だ。それにも関わらずまともな拳王軍との遭遇がなかった。
拳王という恐怖のタガが外れ、軍は霧散したということか。急がねば村が危ない。タジフたちのような賊が増加しているであろう。
「俺はここを勝機と見た!ラオウも死んではいまいが、この機に乗じ勢力を拡大する!」
サウザーは左の人差し指を眉間に置いた。
「俺とラオウの力は互角。勝敗を分けるのはこのような機を活かせるか否かだ」
悔しいがでかい。サウザーこそ、まさに王。帝王だった。
「くれてやる。雇ってやる。その村を好きにしろ。だが貴様は既に死人(シビト)。歴史の表に出ることは叶わん。敗れた者として暗い陰の道を行け!」
そして腕を組むと完全にシンに背を向けて、また瓦礫の荒野の向こうに聳える聖帝十字陵に注視した。
つまり、話は終わったということだ。
だが、立ち去ろうとした時、
「待て、今度は俺の頼みを聞いてもらう。少し付き合え」